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エンタープライズ顧客のために幅広い選択肢を提供

国産クラウドの雄IIJ GIO、マルチクラウドを主軸に据える

2015年02月24日 14時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月24日、インターネットイニシアティブ(IIJ)はクラウドサービス「IIJ GIO」の最新ビジネス概況と今後の展開についての説明会を開催した。他社クラウドを含めたマルチクラウドの展開やSAPのクラウド移行を強力に推進していくという。

キーワードは「エンタープライズ」と「マルチクラウド」

 2010年に前身となる「iBPS」からリニューアルする形でスタートしたIIJ GIO。ニフティクラウドと共に、国産クラウドの先鞭を切った同社のクラウドビジネスは、外資系クラウドの圧力が強まる昨今どのような展開を見せているのか? まずIIJ GIOのビジネス概況を説明した。

IIJ 営業推進部 副部長 神谷修氏

 発表会で登壇したIIJ 営業推進部 副部長の神谷修氏は、IR資料を元に、右肩上がりで売上を伸ばしているIIJ GIOのビジネス概況を披露。「当初は大口ゲーム系顧客などエンタテインメントが4割を占める時期もあったが、こちらはむしろ想定外。ここ1年は特に本命となるエンタープライズの案件が好調に推移している」(神谷氏)とのことで、1年前に比べて、おおむね140%程度の売上増を遂げ、顧客単価も20%強伸びているとのこと。また、特定業種やビッグデータ、ERPなどを注力領域にもソリューション拡大を進めてきたという。

IIJ GIOのビジネス概況

 この結果として、エンタープライズを中心に、1200社強のビジネス基盤として採用。「基幹システムや統合のインフラとしてお使いいただいている」(神谷氏)という状況だ。

 クラウド市場の拡大とともに、IIJ GIOも進化を遂げている。システム要件に合わせた「コンポーネント」と「ホスティングパッケージ」からスタートしたIIJ GIOだが、クラウドファースト時代を踏まえ、2012年はVMwareの仮想化サービスを提供する「VWシリーズ」やVDS/DBaaSやSAPソリューションを拡充。最近ではプライベートクラウドの構築やIIJ GIOとの連携、クラウド間ネットワーク接続などに注力しているという。

クラウド市場の変遷とIIJ GIOの変遷

 そして、クラウドファーストに続く次の市場トレンドは、複数のクラウドを使い分ける「マルチクラウド」。これに対して、IIJ GIOもマルチクラウド戦略を推進。「SDNやフェデレーション、統合的な運用管理を提供し、マルチクラウド化を推進する」(神谷氏)とアピールした。

マルチクラウドに向かう市場動向とは?

 続いて登壇したIIJ ソリューション本部 エンタープライズソリューション部 基盤ソリューション開発課課長の鈴木透氏は、マルチクラウド戦略の詳細について説明した。

IIJ ソリューション本部 エンタープライズソリューション部 基盤ソリューション開発課課長 鈴木透氏

 鈴木氏は、調査会社やITベンダーの資料を基にクラウド市場を概観する。2014年には、外資系クラウドベンダーが国内本格展開が行なわれ、Microsoft Azure、SAP HANA Enterprise Cloud、VMware vCloud Air、IBM SoltLayerなどが進出してきたと説明。2015年以降もOracle Service Cloudのフルラインナップ化やHP Helion Cloudの上陸を予想する。鈴木氏は「Google以外は出そろった。IaaSはコモディティ化が加速している」と指摘する。

外資大手の国内進出の本格化

 この結果、クラウド事業者はインフラより上位のビジネス領域に拡大を進めている。トップを走るAWSはエンタープライズパートナーとの協業を進めるほか、エンタープライズ向けのユーザー会「E-JAWS」を発足。マイクロソフトとIBM、SAPなどのベンダーも相互に協業を進めるとともに、DB as a Serviceや機械学習などエッジの効いたサービスを展開してきている。さらに開発者とインフラ運営のコラボレーションを促進するDevOpsを支援するPaaSやコンテナへの対応、バックアップや災害対策などにも注力してきたと語る。

クラウド事業者のビジネス領域拡大

 また、エンタープライズ市場でシステム構築を手がけてきたSIerがクラウドインテグレーションを本格化。しかも多くの事業者が自社のデータセンター・プライベートクラウド事業と複数のパブリッククラウドを連携したインテグレーションを手がけるようになっている。

SIerのクラウドインテグレーター化

 ユーザー側の変化も大きい。IT部門のIT支出が減る一方で、ユーザー部門のIT予算が拡大。これに伴い、ユーザー部門がIT部門を介さず、直接パブリッククラウドを利用することも増えているという。一方のIT部門は、パブリッククラウドを受け入れざるを得ず、ユーザー部門にクラウドを提供するクラウドプロバイダーになりつつあるという。

 こうした中、オンプレミスのプライベートクラウドは岐路に立つという。鈴木氏は仮想化やリソースプール化、自動化・サービス化から、パブリッククラウドと連携するハイブリッドクラウドに進むというVMwareの“クラウドジャーニー”を参照しつつ、実際には単なる仮想化基盤にとどまっていることが多いと指摘。「自動化やサービス化は進まず、仮想化でうろうろしている。これではユーザーの支持は得られない」という状況で、パブリッククラウドとの外部連携に大きなミゾがあると説明。こうした中、プライベートクラウドは自社構築・運用より、サービス型へ移行する必要があるという。

岐路に立つプライベートクラウド

(次ページ、クラウド事業者とISPとしての顔を活かすマルチクラウド戦略)


 

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