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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック”第56回

プレゼンの秘密をプライベート・クラブで見た

2014年12月26日 09時00分更新

文● 前田知洋

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プレゼンの輪郭とは?

 筆者が楠木さんのプレゼンに驚嘆したのは、内容もさることながらそのプレゼン能力。今回はそのプレゼンの輪郭からプレゼンの極意を考察してみます。

1)観客とのリズムを合わせる時間

 クラブでは、プレゼンの前に参加者と食事をします。楠木さんのユーモアを交えた世間話は、もうその段階で参加者を魅了している感じです。そんなプロセスでコミュニケーションのスピードや単語のコンセンサスをあわせていく。

 プレゼンの参加者と一緒に食事というのは、ビジネスシーンでのプレゼンでは難しいかもしれません。しかし、プレゼン前に参加者と少しだけでも会話して、テンポなどを調整する。筆者も海外公演するときは、英語のブラッシュアップも含め、時間をかけている部分でもあります。

2)もちろん、プレゼンの内容の質も高い

 今回のプレゼンのテーマは「イノベーションと何か?」。現代では誰にとっても大切なテーマであり、一橋大学イノベーション研究センターにも在籍していた、楠木さんならではの折り紙付きの内容です。「鬼に金棒」という諺がある通り、質の高い内容+優れたプレゼンスキルは常にセットです。

 たまに「説明の仕方/言い方を変えれば、良くなる/売れる」みたいなことを喧伝する人がいますが、筆者の意見は反対です。詐欺をしたければ話は別ですが、パッケージ(外箱)を変えても、役に立たない商品やアイディアはそのままのはず。ただし、良い製品やサービスが、マーケティングの失敗で売れなかったなどの逆パターンはありますが…。

3)参加型、鉄板のユーモアがある

 楠木さんのプレゼンには、前半に「どちらだと思いますか?」と二者択一の質問があったり、中盤には「不合理なイノベーションの失敗作」の紹介があったりと人の心を捉える構成。「笑いとは『緊張と緩和』」と言ったのは、噺家の桂枝雀(2代目)ですが、プレゼンも同様です。20分を超えるプレゼンであれば、観客が参加できたり、リラックスできるユーモアのあるシーンがあると観客は逆に内容に集中できることになります。

4)スライドを飛ばすことを厭わない

 楠木さんのプレゼンの後半では「ここは飛ばしましましょう」とスライドをどんどん省略していきます。それが参加者の時間に対する敬意になっています。よく「せっかくキレイなプレゼンを準備したから…」と時間をオーバーしてダラダラと続けるプレゼンターもいますが、それは厳禁。前半や中盤で十分オーディエンスを魅了したなら、逆に「次回はその省略された部分の話を聞きたい」というティーズ(焦らし)になるはずです。

 プレゼンの内容については筆者が少ない文字で勘違いな要約をするより、楠木さんの著書『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『仕事に役立つ経営学』(日本経済新聞社編)に掲載された「戦略イノベーション:「間違い」と「違い」は紙一重」をご一読いただくのが安心安全です。楠木さんのプレゼンを聴くように、読んでいただくと内容が役に立つだけでなく、きっと楽しんでいただけるはず。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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