新発表が続々!「AWS re:Invent 2014」レポート 第5回
ADSJ玉川技術本部長に聞いたAurora登場の背景とインパクト
最新技術でRDBを再設計!理想と現実の狭間に投入したAurora
2014年11月26日 15時00分更新
11月25日、アマゾン データ サービス ジャパン(ADSJ)は先日米国ラスベガスで行なわれた「AWS re:invent 2014」のプレス向け報告会を開催した。登壇したADSJ 技術本部長の玉川憲氏の解説を元に、今回の目玉となる「Amazon RDS for Aurora(以下、Aurora)」登場の背景をひもといてみたい。
データが増えるとコストもかかる商用DBの壁
AWSの最新製品やサービス、事例など披露される「re:invent」も、すでに3回目。参加者は1万3500人を数え、日本からも400名以上がイベントを楽しんだという。
今回のre:inventの目玉が「クラウドのために再発明したリレーショナルデータベース」を謳うAuroraだ。Auroraは商用データベースの性能と信頼性、そしてOSSデータベースのシンプルさと低コストを合わせ持つ新開発のデータベースサービスだ。MySQLの5倍を謳う高いスループットを実現するほか、信頼性やコスト面でも既存の商用データベースを凌駕するという。
玉川氏は、Auroraが生まれた背景について、データベースの拡張性に限界があったと指摘する。従来のデータベースはSQLやトランザクション、キャッシング、ロギングなどが積み重なるレイヤー構造になっており、大規模なアプリケーションで利用するためには、同じものをコピーして使う必要があった。しかし、複数のDBを使う場合、アプリケーションの作り方が難しく、管理負荷も重くなる。とはいえ、シェアードナッシングや共有ディスクなどのアプローチでは、結局コストがかかるというのが課題があった。
玉川氏は、「既存のRDBは、データやトランザクションが増えると、性能に対するコスト比が非線形に増加するという“壁”がある。この壁はなかなか超えられないので、弊社では商用DBをマネージド型で提供するRDSだけではなく、Dynamo DBのようなNo SQL DBを提供してきた。Dymano DBであれば、データ量が増えても、性能とコストを線形で提供できるからだ」と語る。しかし、既存のRDBでも性能が欲しいというニーズは大きかった。「“壁”が越えられないのはわかるが、限界まで性能を伸ばせないかという声が数多くあった」と、玉川氏は語る。
開発者もエンタープライズも満足できる
こうした声に応え、理想と現実の狭間として、高速なインフラをベースに作ったRDBがAuroraだ。これを可能にしたのが、まさにAWSのサービスだ。S3であれば安価で、耐久性が高いストレージを利用できるし、DynamoDBのようなスケールするNo SQL DBも出てきた。「だったら、今のAWSのサービスをベースにリレーションナルデータベースを作り直せばいいじゃないか」(玉川氏)ということで、始まったのがAuroraのプロジェクトだという。
AuroraではCPUやメモリ、ネットワークなどのリソースの利用効率を改善するのはもちろん、ストレージにはSSDを投入。アーキテクチャ面の見直しにより、読み出しで秒間50万select、10万Updateを達成した。また、10GBごとに分けたチャンクを、3つのAZにまたがり6つまで複製。2つのチャンク同時破損でもDBに影響がなく、3つのチャンクが同時破損しても読み取りが影響ないという高いデータ一貫性を担保した。
各レイヤーをスケールアウト前提に設計しなおしたほか、マネージドサービスとしてS3への定期バックアップや暗号化などもすべて実装。これでいて、価格面ではMySQLとほぼ同等の価格を実現したという。玉川氏は、「開発者も、エンタープライズの方々にも満足していただける」とアピールする。
この連載の記事
-
第4回
デジタル
「クラウドは“新しい標準”になった」AWS re:Inventを振り返る -
第3回
デジタル
AWS、re:Inventで「Lambda」など開発関連サービスを一挙発表 -
第2回
デジタル
AWS、EC2で大量のDockerコンテナを一元管理するサービス発表 -
第1回
デジタル
“MySQLの5倍速い”AWSが新DBサービス「Amazon Aurora」発表 -
クラウド
新発表が続々!「AWS re:Invent 2014」レポートまとめ - この連載の一覧へ