連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第176回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 3月15日~3月21日
日本と世界のIT投資先トレンド/セキュリティ製品が多すぎる/30代以下はセルフレジ利用を好む、ほか
2025年03月24日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回は(2025年3月15日~3月21日)、断片化/複雑化する企業のセキュリティソリューション導入の実態、日本と世界のIT投資先トレンド、2024年に国内で公表(報告)されたセキュリティインシデントの統計、やっと日本でも普及し始めたセルフレジに対する意識調査のデータを紹介します。
[セキュリティ] 企業は平均で83種類ものセキュリティソリューションを導入、複雑さが障壁に(3月18日、パロアルトネットワークス/日本IBM)
・1つの組織が使用するセキュリティソリューションは平均で「29社/83種類」
・過半数の組織が「ソリューションの断片化でサイバー脅威への対応が制限されている」
・プラットフォーム化未対応の組織の80%が「脅威や攻撃に効果的に対処できない」
18か国/21業界の経営幹部約1000人を対象に、セキュリティ技術導入の実態を聞いた。調査対象企業は、平均で29ベンダー/83種類のセキュリティーソリューションを使用しており、セキュリティ業務の最大の障壁は「複雑さ」とした回答者は52%に達した。さらに、多数のソリューションどうしが断片化/複雑化していることでかかるコストは「年間収益の5%を占める」と見積もっている。一方で、プラットフォーム化している組織の80%は「潜在的な脆弱性や脅威を完全に可視化できる」と回答している。
⇒ セキュリティソリューションどうしの断片化、複雑化は以前から指摘されており、ベンダー各社は「プラットフォーム化」の推進を訴えています。理想としては分かりますが、“セキュリティだからこそ”統合のために製品を変更するのが難しい側面もあるように思います。
[IT投資] 2025年のIT投資で優先するカテゴリは? 日本と世界の違い(IDC Japan、3月17日)
・日本と世界で共通するのは「DX/AI推進のためのインフラ投資を優先」
・日本企業は「基幹システムの改善への投資」も優先項目に
・世界のトレンドは「カスタマーエクスペリエンス(CX)向上への投資」
日本を含む世界約20カ国の企業(従業員数500人以上)のIT調達意思決定者に対する月例調査から、IT/デジタル投資のトレンドを日本/世界で比較した。共通するIT投資トレンドとしては「DX/AI推進のためのインフラ構築/運用」「AI/自動化」「データ/アナリティクス」「規制順守」など。日本では「基幹業務アプリのモダナイズ」も多く挙がった一方で、世界では「CX向上」が多かった。
⇒ 日本企業は、ほぼ全分野のデジタルテクノロジーに対して、世界平均よりも高い投資意欲を持っているとのこと。その背景には、主要先進国と比べて遅れているDX/AI活用を挽回する必要性や、深刻な人材不足への懸念があると分析しています。
[セキュリティ] 2024年の国内セキュリティインシデントは前年比1.4倍、学校/教育機関が増加傾向(デジタルアーツ、3月18日)
・公開情報の集計による国内セキュリティインシデント件数は、前年比1.4倍に増加
・最多は「不正アクセス」、以下「マルウェア感染」「紛失・盗難」
・マルウェア感染のうち、半数以上がサプライチェーンに起因
日本国内で発生したセキュリティインシデントを、公開された報告書や報道資料から集計した。その結果、2024年の国内セキュリティインシデント総数は1319件となり、前年比で1.4倍に増加した。種類別では「不正アクセス」が372件で最多。また、2位の「マルウェア感染」の9割以上をランサムウェアが占めた。サプライチェーンに起因するインシデントは500件を超え、9割以上を業務委託先が占めた。学校/教育機関に起因するインシデントも176件と、年々増加していることに注意を促している。
⇒ あくまでも「公開(報告)された」セキュリティインシデントの集計である点には注意が必要ですが、全体の傾向は分かります。学校/教育機関へのサイバー攻撃は各所で報じられており、大きなトレンドになりつつあるようです。
[消費者][生活] キャッシュレス決済利用者のセルフレジ利用経験は9割超(SBペイメントサービス、3月18日)
・キャッシュレス決済利用者の9割以上が「セルフレジの利用経験あり」
・店舗におけるセルフレジ導入率も5割を超える
・セルフレジを導入してほしい店舗/施設は「医療」や「飲食」関連
1年以内に実店舗でキャッシュレス決済を利用した消費者、および店舗運営に従事する男女と店舗経営者を対象に実施した、セルフレジの利用/導入状況に関する調査より。キャッシュレス決済利用者のセルフレジ利用経験は94.1%に達した。一方で、店舗のセルフレジ導入率は55.5%。消費者側は「スーパー」「100円ショップ」などの身近な場所でセルフレジを利用しており、30代以下は友人レジよりもセルフレジを優先的に利用するなど、強い利便性を感じていることが分かった。
⇒ セルフレジは、欧米では2000年代前半から普及していました。日本での普及が遅れた背景には「現金(キャッシュ)」決済が多かったことがあります。キャッシュレス決済が一般化したことで、その利便性がやっと浸透しているようです。

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