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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第327回

「SNS規制に反対します」──批判集まった“情プラ法”とは

2025年03月18日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 SNSを運営するプラットフォームに対して、誹謗(ひぼう)中傷や、なりすまし、闇バイトの勧誘などの投稿に対して、迅速な対応を義務付ける「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)が2025年4月1日に施行される。

 情プラ法はもともと、プロバイダ責任制限法(プロ責法)という名前だったが、プラットフォームの責任に関する規定を設け、法律名も変えた。この新しい法律は3月11日の閣議で、4月から施行されることが決まっている。

 情プラ法に対して、閣議があった3月11日ごろから、SNS上で「政権による言論弾圧だ」とか「SNS規制に反対します」といった声が上がっている。とくに、情プラ法の運用の指針となるガイドラインが、誹謗中傷などを受けた「被侵害者」以外の第三者からの削除要請についても、「速やかに対応を行うことが望ましい」とした点に批判が強いようだ。法律とガイドラインの中身を可能な限り詳しく見てみたい。

削除の申し出には7日以内に返事

 プロ責法から情プラ法への改正で、もっとも大きな変更は、「大規模特定電気通信役務提供者の義務」が新しい章として追加された点だ。

 「大規模特定電気通信役務提供者」は、SNSや巨大掲示板の運営者が該当する。情プラ法は、SNSなどのプラットフォームに対して、権利侵害になりうる投稿について、主に以下の義務を規定している。

  • 削除要請を受け付ける窓口を設ける
  • 明確な削除の基準を設定する
  • 迅速に対応する

 削除の基準については、情プラ法はプラットフォームに対して、「できる限り具体的に」定めるよう求めている。3番目の「迅速に対応する」点については、情プラ法の施行規則で、削除などの申し出があってから、7日以内に通知することと規定している。

 法律の中身を確認する限り、SNSや巨大掲示板のプラットフォームに対して、削除のための手続きをきっちり整え、申し出に速やかに対応しなさいというのが、今回の法改正の趣旨であると理解できる。そうすると、現時点では、「政府による言論弾圧」という批判は若干矛先がずれているかもしれない。

 ただ、中央省庁や(与野党を問わず)有力政治家たちがこの仕組みを使って、気に食わない投稿に対して、削除の申し出を乱発するようなことがあれば、それこそ「言論弾圧」だろう。

第三者からの削除要請

 今回の法律の施行に併せて、総務省が2本のガイドラインを公表している。SNSや巨大掲示板を運営するプラットフォームの義務についての指針と、具体的にどんな投稿が削除の対象になりうるかを示したものだ。プラットフォームの義務を定めたガイドラインには、次のような記述がある。

 「権利侵害情報による被害者を救済する観点から、大規模特定電気通信役務提供者においては、被侵害者以外の者による削除申出についても、(中略)、速やかに対応を行うことが望ましい」

 この記述は、素直に読むと、第三者からの削除要請に対しても、権利侵害に該当すると判断した場合は、削除などの対応を7日以内に講じて、通知することになると理解できる。

 問題になるのは、この第三者からの削除要請をどう使うかだろう。たまたま、情プラ法の規定を知っているユーザーが、だれかの権利侵害に当たると思われる投稿を目にしたとき、「削除したほうがいいのではないか」とプラットフォームに申し出ることができるとすれば、意義のある制度だろう。

 しかし、こうした仕組みは近年、乱用されがちだ。たとえば、国政選挙や知事選といった注目を集める選挙で、ある候補者の支持者たちが、対立候補のSNSアカウントについて、一斉に違反行為があるとプラットフォームに申し出をして、その候補者のアカウントが一時的にBAN(停止)される事態が起きている。

 情プラ法が削除要請の窓口をつくるようプラットフォームに求めている以上、選挙戦のような可燃性の高い場面で、特定のアカウントを攻撃するツールとして使われる可能性はあるだろう。

 そうなると、この制度で重要となるのは、プラットフォーム側の対応の精度だ。情プラ法が規定するように、できる限り具体的な基準を設定し、できる限り多くの人が納得のいく形で削除するのかしないのかを判断し、速やかに手続きを進めることが求められる。

 ただ、新しい制度については、プラットフォーム側の負担が重すぎるという批判がある。実際、プラットフォームがまじめに制度を運用するとすれば、かなりの人員や費用がかかるのではないか。

何が削除の対象になるのか

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