新発表が続々!「AWS re:Invent 2014」レポート 第4回
クラウドを前提としたITの“再発明”、アジリティ重視、独自の企業カルチャー
「クラウドは“新しい標準”になった」AWS re:Inventを振り返る
2014年11月25日 15時00分更新
「クラウドは“ニューノーマル(新しい標準)”になった」――。11月11~14日に米ラスベガスで開催された年次デベロッパーカンファレンス「AWS re:Invent 2014」において、Amazon Web Services(AWS)のSenior Vice President、アンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏はこう力強く宣言した。会期中に発表された幾つかの新サービスも、「クラウドが前提となった新しい世界」にITがどうあるべきかを再考した結果だと言える。
ここではジャシー氏の基調講演と、会期中に発表された新サービスを中心に振り返りながら、AWSが現在考えていることを掘り下げてみたい。
「ニューノーマル」になったクラウドを前提に、ITを再発明する
基調講演において、ジャシー氏は「AWSにおけるイノベーションのペースは加速している」と紹介した。
実際、AWSでは既存のサービス群において頻繁に新機能の追加を発表しており、そのペースは年々加速している。昨年は280個だったものが、今年は11月10日(基調講演前日)までですでに442個を発表しており、12月末までに500個を超える勢いだという。
re:Inventの期間中にも、合計で11の新発表があった。まったく新しいサービスもあれば、既存サービスの拡充(新ラインアップ)に当たるものもある。
・Amazon RDS for Aurora
・AWS CodeDeploy
・AWS CodeCommit
・AWS CodePipeline
・AWS Key Management Service
・AWS Config
・AWS Service Catalog
・Amazon EC2 Container Service
・AWS Lambda
・Amazon EC2 C4インスタンスタイプ
・Amazon EBS General Purpose(SSD)/Provisioned IOPS(SSD)ボリューム
これらのうち、一昨年発表の「Amazon Redshift」や昨年発表の「Amazon Kinesis」ほどのインパクトはないかもしれないが、Amazon RDS for AuroraやAWS Lambdaなどは“イノベーション”と呼ぶにふさわしい新しさを持っていると、筆者は感じた。これらは「クラウドの新しい世界でしか実現できないこと」に取り組んでいるように思えるからだ。
実際、基調講演で登壇したAWSのAurora担当GM、アヌラグ・グプタ(Anurag Gupta)氏は、Auroraの開発は「AWSが存在する世界で、RDB(リレーショナルデータベース)を再設計するとどうなるか」というコンセプトに基づいてスタートしたと説明している。つまり、単に旧来の(オンプレミスの)RDBをクラウド上に再現したものではなく、AWSが持っているS3などのサービス群、スケール、コスト構造などを前提として「もっといいやり方」(同氏)を追求した結果がこのAurora、というわけだ。
イベント駆動型アプリケーション実行環境のLambdaも同様だ。開発したアプリケーションを配置すれば、あらかじめ紐付けられたイベント(データの追加や変更など)をトリガーとして、Lambdaプラットフォームが自動的に必要な実行環境を整え、コードを実行してくれる。開発者はコード実行時のメモリ容量を指定するだけで、アプリケーションの実行環境(EC2インスタンスやOSなど)を用意する必要がない。イベント発生を常時監視するためのコード、そのためのリソースも不要だ。
ここで注目したいのが料金体系だ。Lambdaの利用料金は「コード実行時間(100ミリ秒単位)」と「リクエスト数」にのみ基づき決定される方式となっている。イベント発生を待ち受け、常時監視するリソースはすべて“AWS持ち”であり、より純粋に「ユーザーは使った分だけ支払えばよい」従量課金モデルへと近づいている。それが個々のアプリケーションにおいて割安になるかどうかはまた別の話だが、「Elastic Beanstalk」や他社のPaaSが、1時間単位であれ1分単位であれリソースを一定時間占有する料金体系であることと比較すると、より“クラウドならでは”のモデルに進んでいると言えるのではないだろうか。
(→次ページ、「アジリティ」を重視、マイクロサービス化への言及も)
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