前回に続きCRI(Cray Research, Inc.)の話である。CRAY-1の完成後、シーモア・クレイはCRAY-2の設計に着手する。
CRAY-2
これに先立ちクレイはCRIを辞任すると同時に、コンサルタントとして同社と契約する。また、クレイは本社から離れた場所での作業を望み、これを受けて同社はコロラド州のボルダーにCRAY Labsを開設。CRAY-2の開発はここで行なわれた。
CRAY-2の目標は
CRAY-1の10倍の性能
CRAY-2の設計目標は、CRAY-1の10倍の性能だった。世代毎に10倍というのはもはやクレの信念に近いのかもしれない。では、どうやってそれを実現するかが次の問題である。
クレイの設計目標は単純だった。実行ユニット数を増やし、動作周波数を上げ、かつ信号遅延を減らせばいい。
CDC 8600はまさしくこの好例で、CDC 7600を小型化することで信号遅延を削減し、さらに実行ユニット数を増やすため4台分まとめて動作させて、CDC 7600から大きく性能を引き上げようと目論んだわけだが、うまく行かなかったことは連載273回ですでに述べた通りだ。何がまずかったのかのかは後に回すとして、CRAY-2の話に戻ろう。
CRAY-2は最大で4プロセッサー構成が予定されていた。厳密には「4バックグラウンド・プロセッサー」構成である。下の画像がその4プロセッサー構成だ。
1つのフォアグラウンド・プロセッサーから最大4本の高速チャネルが出て、ここにディスクドライブやフロントエンド(いわゆる通信装置類)やテープドライブがぶら下る。
そしてフォアグラウンド・プロセッサーとコモンメモリーの間には、4つのバックグラウンド・プロセッサーがぶら下るという構成である。
強いていえば、このフォアグラウンド・プロセッサーというのは最近のCPUでいう所の、In-orderで駆動されるフォアグラウンド(キャッシュのプリフェッチ~デコードとスケジューラーまで)に相当し、バックグラウンド・プロセッサーはOut-of-orderで駆動されるバックグラウンド(実行ユニット~ライトバックまで)に相当するといったところだろうか。
もちろんCRAY-2の方がもっと粒度が大きいし、フォアグラウンド・プロセッサーは他にもシステム管理などの作業も担っているので、厳密には違うのだが。
このバックグラウンド・プロセッサーの構造が下の画像である。CRAY-1の内部構造と非常に良く似ていることがわかる。
といっても、多少は異なっている。まずアドレスサイズは32bitに拡張されている。またアドレス(A)レジスター/ベクトルレジスター(V)/スカラーレジスター(S)の数は同じだが、アドレスセーブ(B)とスカラーセーブ(T)のレジスターは省かれた。
そしてベクトルユニットはLogicalとIntegerの2つになったりと細かく変更があるのは、おそらくはCRAY-1での使われ方を見ながら、ある程度最適化したものと思われる。
搭載メモリー量とメモリー種別はモデルによって違いがあり、以下のようになっている。
| CRAY-2の搭載メモリー量とメモリー種別 | ||||
|---|---|---|---|---|
| Background Processor | 2 | 2 | 4 | 4 |
| SRAM(64bit words) | 64M | 128M | 128M | N/A |
| DRAM(64bit words) | N/A | N/A | N/A | 256M |
| Disk Storage | 4-18 | 4-18 | 4-36 | 4-36 |
| 6 or 12MB/sec channel | 2-8 | 2-8 | 4-16 | 4-16 |
| Magnetic Tape channel | 0-8 | 0-8 | 0-16 | 0-16 |
| 100MB/sec channel | 0-4 | 0-4 | 0-8 | 0-8 |
ハイエンドはDRAMで2GB(256Mwords@64bit)ものメモリーを搭載するという怪物で、これは大きなデータ量を必要とする計算向けである。
逆にSRAMベースの1GB(128Mwords@64bit)モデルは高性能演算向けという位置づけで、同社によればDRAMに比べて15~25%高いスループットが実現できるとしていた。
ちなみにサイクルタイムそのものは4.1ナノ秒(243.9MHz)まで短縮されており、この結果ピーク性能は1つのバックグラウンド・プロセッサーあたり487.8MFLOPS。4プロセッサー構成では1.95GFLOPSに達する。
CRAY-1のピーク性能160MFLOPSに過ぎないから、10倍以上の高速化となる。実際同社のカタログでは、演算性能はCRAY-1の6~12倍に達すると説明されている。
→次のページヘ続く (立体積層で配線遅延を解決)
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