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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第263回

Pentium 20年の系譜 P6コアのPentium IIからPentium IIIまで

2014年07月28日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 2014年7月にPentiumの20周年記念モデルとして「Pentium G3258」が発売された。そこでこの機会に、Pentium20年の歴史を振り返ってみよう。前回はP5世代を解説したので、今回はP6世代を解説しよう。

P5と平行して開発が進んでいた
P6マイクロアーキテクチャー

 P5コアの開発と並行して、やはりインテル内部ではP6の開発が始まっていた。開発開始は1990年6月で、開発拠点は同社のオレゴンのデザインセンターである。

Pentium IIからPentium IIIまでのインテルCPUロードマップ

 1990年というのはまだP5がリリースされる前、i486がリリースされたばかりの時期である。つまり、P6はP5とかなり開発期間が重なっていたことになる。

 P6は、初期のコンセプトの段階ではVILWを含むさまざまな方式を検討するために、簡単なDFA(Data Flow Analyzer)と呼ばれるシミュレーションツールを作成し、性能の評価を行なった。その結果、スーパースカラー+アウトオブオーダーの構成が一番性能が高くなるという判断に至ったらしい。

 ところが当時はスーパースカラーに関する研究や論文はいずれもRISCプロセッサをベースとしており、CISCのままアウトオブオーダーを実装した例、あるいは研究は皆無だったそうだ。

 そこで、フロントエンドでx86のCISC命令をRISC風の内部命令に変換して処理する、というアイディアが生まれることになった。この発想が間違いではなかったのは、1993年に突如開発の始まったAMDのK5や、1993年にリリースされたNexGenのNx586が、いずれもx86命令をフロントエンドでRISC命令に変換して実行する方法を実装したことからもわかる。

 それぞれの開発開始時期を考えると、「ある1社の方法を他社が真似した」わけではなく、各社がそれぞれ最適な方法を考えた結果、同じ結論に達したと考えるべきである。そして、この方式は正しい選択であった。

P6コア初のプロセッサー
Pentium Proの誕生

 さて、最大3命令同時デコード、最大5命令発行のアウトオブオーダーという、P5と比べて十分重厚な構成となったP6コアであるが、最初の製品である「Pentium Pro」は、CPUコアだけで5.5万トランジスタに達した。

P6コアを最初に採用した製品「Pentium Pro」

 これは当初の0.6μm BiCMOSプロセスでは306mm2に達しており、2次キャッシュまで実装しきれないという問題が出た。そのため、2次キャッシュはダイの外に取り付けざるを得なかった。

 このあたりは、1次キャッシュだけでそこそこの性能が出たP5との違いであり、2次キャッシュを省いたP6コアの性能が悲惨なのは、後にCovingtonコアのCeleronで再確認することになる。

 したがって2次キャッシュを搭載したのは正解なのだが、この当時はコアと等速で動くことを重視し、インテルとしては初になるMCM(Multi-Chip Module)構成にしたのは、パッケージングにとって挑戦であった。結果、歩留まりは悪いわ、コストが高くなるわと散々だったのは仕方のないところだ。

 しかも、がんばって150~200MHzで動かしたため、当初のTDPは31.7W(150MHz・256KB L2)~37.9W(200MHz・512KB L2)に達した。これはPentium MMX 233MHzのTDP(17W)の倍以上の数字で、放熱にも気を配る必要があった。

 そして、大きなダイ+オフチップ2次キャッシュなので価格が下がるわけもなく、1993年11月の発表時には一番安い150MHz版で974ドル、200MHz+512KB L2版は1989ドルというぶっ飛んだ価格になった。ここまで高いとコンシューマー向けにはまるで向いていないことは明白であった。

 また、実際にベンチマークをしてみると、32bit命令は高速ながら、当時主流だったWindows 95ではむしろPentiumに劣る結果が出てきたのは、Windows 95がまだかなりの部分が16bit命令で記述されており、Pentium Proは16bitへの最適化が十分でなかったことによる。

 結果としてPentium Proはコンシューマーにはほとんど普及しなかった。その一方で当初からマルチプロセッサーに対応しており、純正チップセットで最大4P、サードパーティ(ServerWorks)製のチップセットでは6Pや8P構成が可能であった。

 OSの方もこの頃にはWindows NT Serverをはじめ、いくつかのOSがSMP(対称型マルチプロセッシング)対応になっていたため、急速にシェアを伸ばすことになり、RISCベースのサーバーから市場を次第に奪うことになる。

 Pentium Proは“Pro”という名称に相応しく、エンタープライズやワークステーション市場で確実に受け入れられたため、このあたりまで勘案するとPentium Proは成功した製品と言って問題ないだろう。

 性能面でも、当初は0.6μmプロセスだったのが、後に0.35μmのCMOSプロセスに切り替わり、最大1MBの2次キャッシュを搭載した製品も追加された。

→次のページヘ続く (Socket 7の廃止を目論むPentium II

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