既報の通り、2014年7月にPentiumの20周年記念モデルとして「Pentium G3258」が発売された。そこでこの機会に、Pentium20年の歴史を振り返ってみよう。
登場時はあまりパッとしなかった
初代Pentium
初代のP5コアベースのPentiumがリリースされたのは1993年のことである。この頃の市場は連載60回でまとめているが、もうすこし細かく解説する。
Pentiumの前モデルであるIntel 486はいろいろな意味で大成功したCPUとなった。元々i386で無事に32bit化がなされて、しかもi286に比べて大幅に高速化したことで、i386は売れに売れ、インテルの経営基盤を磐石にする最初の礎となった。ただし、内部はマイクロコードを多用した構成だったため、高速化や省電力化の余地が多く、実際AMDを初めとする競合メーカーはすぐにこれを改良した。
それに対しi486は、論理回路をソフトウェアによらずハードウェアで実現したことで、主要な命令を1サイクルで実行できるように改良。さらにパイプラインの高速化にも留意したことで、プロセスの微細化と相まって最終的に100MHz駆動に達する。
もっとも、この頃には競合メーカーもやはりプロセスの微細化などにより、急速に性能を上げていたため、どこまで性能面での優位性が保てるかはやや微妙なところがあった。こうした競合メーカーとの性能競争のさなかの1980年代末に設計が始まったのが、P5コアである。
実のところP5コアの開発が始まった頃は、まだCISC/RISC論争に決着がつく前であり、The Pentium Chronicles(※)によれば1990年代に入ってもインテル社内ですら、まだCISC/RISCのどちらが有利か、定性的な結論が出ていなかった模様だ。
(※) The Pentium Chronicles P3 "Betting on CISC"より。
P5コアの設計を担当したチームはi486とほぼ同じスタッフで、i386からほぼ同じチームが担当していたらしい。インテル本社があったサンタクララに本拠を構えて開発していたこのチームは、もちろんx86を捨てたりせず、CISCをベースに開発した。
ただ、単一のパイプライン構造ではこの先の性能改善は見込めないと判断し、2命令のスーパースカラー構成を取った。このスーパースカラーは、完全な2命令構成ではない。パイプラインはUとVの2本あるが、このうち全命令を実行できるのはUのみで、Vの方は使われる頻度が高いと判断される比較的簡単な命令のみを実行できる仕組みだ。
また、P5のパイプラインはあくまでもx86をx86命令として解釈・実行する仕組みで、まだP6のような命令変換は実装されていない。この非対称な命令パイプラインは、例えば後で出てくるCyrixのM1のような完全対称型パイプラインと比べると美しさには欠けるが、その一方で最小のトランジスタ数で効果的に性能を引き上げられる方法であった。
細かな命令処理速度の改善や、FPUの高速化、データバスの64bit化など、性能向上につながる数多の改善が施されている。それにも関わらず、第1世代のPentiumはあまりぱっとしなかった。これには理由がいくつかある。
→次のページヘ続く (なぜ第1世代のPentiumはブレイクしなかったのか)
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