Pentium20年の歴史を振り返る企画の第4回となる今回は、モバイル向けのPentium Mだ。その前にまずは、Pentium Mが生まれるきっかけとなった幻のCPUを説明しなければならないだろう。
Pentium M
日の目を見なかった幻のCPU
Timna
前回は、P6に代わってP4がメインストリーム向けに提供されるようになった歴史を解説したが、この世代交代の影に隠れてもう1つのプロジェクトがあった。
前々回には説明しなかったが、インテルはCeleronの製品ラインナップを強化、言い換えれば、安いコストで提供できるようにという意図で、KatmaiベースのPentium IIIのコアにIntel 752ベースのグラフィック、それとMCHまでをワンチップに統合した製品を開発した。これがTimnaである。
ところがTimnaはメモリーにDirect RDRAMを予定しており、これがCeleron向けにはあまりに高価になりすぎて適さないという議論が起きた。そこでMTH(Memory Translator Hub)を使ってPC100 SDRAMを使えるように工夫したら、今度はMTHのトラブルでめどが立たなくなった。結局インテルはTimnaの製品ラインそのものをキャンセルした、という話は連載114回のCPU黒歴史で解説した通りだ。
Timnaの設計に携わっていたのは、MMX Pentiumを開発していた、イスラエルのハイファにある設計チームである。このチームはTimnaの中止を受けて、それに代わる新しいCPUコアであるBaniasの設計に携わることになる。
このハイファの設計チーム、Timnaの時はオレゴンと密に連絡を取りつつ、Katmaiを独自に0.18μm化している。Coppermineをベースにしたのではないことは明らかになっており、連載114回でも少し触れたが、独自の改良や変更を施している。ただパイプラインそのものを見直すレベルでの変更はなかったそうだ。
この経験は、そのままBaniasに生きることになる。Pentium 4は開発中から消費電力がかなり高くなることは明らかになっていた。実際、Mobile Pentium 4-Mや、(“-M”がつかない)Mobile Pentium 4という製品も登場したものの、前者のTDPは26~35W、後者に至っては60~88WものTDPだった。
フルサイズノートならばなんとかMobile Pentium 4-Mは搭載できたが、Mobile Pentium 4はデスクトップ、あるいはDTR(DeskTop Replacement)という、見かけはノートっぽいがサイズは普通のノートの二周りは大きい代物に採用されるに留まった。
これもあって、デスクトップ向けがPentium 4に切り替わったあとも、長らくMobile Pentium-IIIがリリースされていた程だ。Baniasはこれを代替することを目標に設計された。
→次のページヘ続く (性能/消費電力比を非常に重視した設計のBanias)
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第875回
PC
1000A超のAIプロセッサーをどう動かすか? Googleが実践する垂直給電(VPD)の最前線 -
第874回
PC
AIの未来は「電力」で決まる? 巨大GPUを支える裏面給電とパッケージ革命 -
第873回
PC
「銅配線はまだ重要か? 答えはYesだ」 NVIDIA CEOジェンスンが語った2028年ロードマップとNVLink 8の衝撃 -
第872回
PC
NVIDIAのRubin UltraとKyber Rackの深層 プロトタイプから露見した設計刷新とNVLinkの物理的限界 -
第871回
PC
GTC 2026激震! 突如現れたGroq 3と消えたRubin CPX。NVIDIAの推論戦略を激変させたTSMCの逼迫とメモリー高騰 -
第870回
PC
スマホCPUの王者が挑む「脱・裏方」宣言。Arm初の自社販売チップAGI CPUは世界をどう変えるか? -
第869回
PC
半導体プロセスの新たな覇権! インテルのDNNプロセッサーはAMDやMetaを凌駕する配線密度と演算密度 -
第868回
PC
物理IPには真似できない4%の差はどこから生まれるか? RTL実装が解き放つDimensity 9500の真価 -
第867回
PC
計算が速いだけじゃない! 自分で電圧を操って実力を出し切る賢すぎるAIチップ「Spyre」がAI処理を25%も速くする -
第866回
PC
NVIDIAを射程に捉えた韓国の雄rebellionsの怪物AIチップ「REBEL-Quad」 -
第865回
PC
1400WのモンスターGPU「Instinct MI350」の正体、AMDが選んだ効率を捨ててでも1.9倍の性能向上を獲る戦略 - この連載の一覧へ











