マイクロソフトが、ハードウェアパートナーに対してWindowsの無償提供を開始すると発表した。
対象となるのは、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)向けのWindowsと、9型未満のディスプレーを搭載したデバイスだ。
開発者イベント「Build 2014」の初日キーノートにおいて、テリー・マイヤーソン(Terry Myerson)氏がIoT向けWindowsについて発表。インテルの「Quark」搭載ボード「Galileo」上で動作するWindowsのデモを披露した
IoT向けでは「Windows Embedded 8.1」が無償提供される公算が強く、9型未満のディスプレーを搭載したデバイスのうち、タブレット向けには4月9日に公開された最新の「Windows 8.1 Update」、スマートフォン向けには、4月後半ばに搭載製品が投入される予定の「Windows Phone 8.1」が提供されることになるだろう。
発表されたリリースでは、「ハードウェアパートナーは、1GBのRAMと16GBのHDDを備えたデバイスといった低価格のマシンで利用できる」としており、場合によっては機能を限定したWindowsが提供される可能性もありそうだ。
開発者イベント「Build 2014」の初日キーノートにおいて、2時間3分30秒前後からIoT向けWindowsの話題に触れ始めている |
Windows無償提供の理由
では、なぜ、マイクロソフトはWindowsの無償提供を開始するのだろうか。
ひとつめの理由は、マイクロソフトが出遅れているタブレットおよびスマートフォン市場でのシェア拡大にある。
PC市場においては約9割という圧倒的なシェアを持つWindowsではあるが、タブレット市場およびスマートフォン市場では苦戦が続いている。
いずれの市場もタブレットおよびスマートフォンで先行したアップル、無償でOSを提供するAndroidが席巻。Windowsは後塵を拝している。
Windows陣営のタブレット戦略がうまくいっている日本市場においては、2013年10〜12月に26%のシェアを獲得。ようやく4分の1のところまで拡大した。わずか1年前にはシェアは0であった。
一方、全世界のスマートフォン市場では、IDCが発表した2013年10〜12月の市場シェアによると、Windows Phoneはわずか3.0%のシェア。Androidの78.1%、iOSの17.6%に比べてその差は歴然だ。しかも日本では、Windows Phoneの新製品が2年間発売されていない状況にある。
こうした市場に向けて、マイクロソフトはWindowsを無償で提供し、シェアを拡大しようというわけだ。
実際、昨年の段階で、マイクロソフトはタブレット向けにWindowsのライセンス料を3分の1程度にまで引き下げた経緯があり、その結果、8型ディスプレーを搭載した低価格のWindowsタブレットが相次いで登場。シェアを拡大することに成功している。今回の施策は、これをさらに加速することになるだろう。
9型を超えるディスプレーを搭載しているのは、マイクロソフトが圧倒的シェアを誇っているPCであり、ここはマイクロソフトにとってもドル箱の市場。この市場においては、引き続きライセンス販売を継続するが、遅れの挽回が早急の課題となる9型未満ではWindowsを無償で展開することになる。

この連載の記事
-
第215回
PC
「クリエイティブ」に向かうWindows 10とSurfaceファミリー -
第214回
PC
日本企業の変革を象徴、世界最大規模の「Office 365」大型導入 -
第213回
PC
資生堂、オンライン会議中の顔を美しく見せる「Tele Beauty」を開発 -
第212回
PC
女子高生AI“りんな”は母親思いのカープ女子!? 自分の子供より返事が多いというユーザーも -
第211回
PC
Office 365が3ヵ月無料試用OK、セットアップも支援 - 働き方改革週間締め切りは9月30日 -
第210回
PC
Windows 10企業導入の障害は、WaaS(Windows as a Service)と180日ルール -
第209回
PC
アクア、DMG森精機 - IoTの協業発表が相次ぐ日本マイクロソフト -
第208回
PC
MS SQL Server 2016は、オラクルの牙城をいかに崩すか、PostgreSQLにどう対抗していくのか -
第207回
PC
起死回生の製品になるか? 「Microsoft Dynamics 365」 -
第206回
PC
2096名で挑む大規模ライフハック! - 日本マイクロソフトが掲げる”本来”のテレワーク -
第205回
PC
日本MSが開催イベント名称・内容を再編 - グローバルイベントとの名称統合を実現してほしい - この連載の一覧へ