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日本のITを変える「AWS侍」に聞く第2回

JAWS三都物語を支える関西パワーの源に迫る

関西のJAWSを盛り上げる金春さんと小賀さんがクラウドを語る

2014年06月02日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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日本のITを変えようとしているJAWS-UG(AWS User Group-Japan)のメンバーに、クラウドビジネスへの目覚めとコミュニティについて聞く連載の2回目。今回は関西を中心にクラウドビジネスとコミュニティ活動に邁進する2人のJAWS-UGメンバーに話を聞いた。

本連載は、日本のITを変えようとしているAWSのユーザーコミュニティ「JAWS-UG」のメンバーやAWS関係者に、自身の経験やクラウドビジネスへの目覚めを聞き、新しいエンジニア像を描いていきます。連載内では、AWSの普及に尽力した個人に送られる「AWS SAMURAI」という認定制度にちなみ、基本侍の衣装に身を包み、取材に臨んでもらっています。過去の記事目次はこちらになります。

インフラ面での限界を感じた金春さん

 今回、お話を聞いたのはアールスリーインスティテュートの金春利幸さんとデジタルキューブの小賀浩通さん。かたやフルスタックのSI会社、かたやWordPress専業のWeb制作会社という違いはあれ、関西のJAWS-UGで積極的に活動しているのは共通している。まずはお二方のビジネスプロフィールとAWSとの出会いを聞いてみよう。

 もともと大学でロボットの画像処理の研究をやっていた金春さんは、1999年にNTTデータに就職。J2EEなどが盛りあがっていたJavaを使って、試験的なシステムを作っていたが、約1年で退職。このときの同僚と立ち上げた会社が、現在のアールスリーインスティテュートだ。

アールスリーインスティテュートの金春利幸さん

 金春さんがAWSに行き着いたのは、インフラの保守に危機感を感じたからだという。「弊社は小さいSIerですが、大手の下請けをしていないので、上流から下流まで提供しています。しかし、データセンターを持つ体力がないので、サーバーだけはお客様に買っていただかなければなりませんでした。ですから、 システムの数だけ保守が発生し、社内がサーバーだらけになっていたんです」(金春さん)。しかし、AWSを使えば、自前でインフラが調達でき、その構築ノウハウすらビジネスの武器にできる。実際、アールスリーインスティテュートも、最初は自身が開発のためにAWSを使い始めたが、その後ユーザーに勧め始めているという。AWSを使うことで、最近“未来がない”と揶揄されることの多い受託開発に関しても、将来が見えると語る。

 とはいえ、単にオンプレミスのサーバーをクラウドに置き換えたり、EC2やRDSを使ってインテグレーションをしても、もはや差別化にならない。そのため、最近増えてきたAWSの尖った製品をいかにうまく飼い慣らしていくかが大きな差別化になるという。「たとえばリアルタイムにデータ分析できるkinesisは、今までのAWSのプロダクトと異なり、その上に何が載るのかを考えないとかなり使いにくい。こうしたプロダクトをいかに使っていくか考えるのであれば、私たちのような受託開発もまだまだやれることある」とのことで、SIerならではの知識やノウハウが活かせると考える。

WordPressのコミュニティで楽しさを知った小賀さん

 一方、小賀さんは、オープンソースのCMSであるWordPressのコミュニティ活動に古くから参加しており、自身もデジタルキューブというWordPress専業のWeb制作会社を運営している。「2006~2007年頃、WordPressは米国で流行りそう程度だったし、日本でも積極的なビジネス利用はなかったと思う。でも、ツールとして面白かったし、オープンソースだったのでコミュニティ活動に魅力があった。オープンソースありき、コミュニティありきで、 仲間が増え、会社ができていった」と小賀さんは語る。

デジタルキューブの小賀浩通さん

 小賀さんの関わるWordPressのコミュニティは、「WordCamp」のようなイベントを国内で定期的に開催するほか、日本のローカルコミュニティ「WordBench」を有志が立ち上げ、地域コミュニティの連携にも注力している。「WordCampも最初は30~40人くらいしか集まらなかったけど、コミュニティが試行錯誤しながら、イベントをやり続けた結果、今では1000人規模になってきた」(小賀さん)とのことで、大きく成長したという。

 そんな小賀さんがAWSに関わるようになった契機も、やはりインフラ面での限界を感じてきたことだった。「自社の仕事で多いWebメディアのお客さんを中心に、既存のオンプレのサーバーで限界が出るパターンが頻発してきた。たとえば、急なトラフィックの増加に安価で容易にスケールできないとか。自分たちでインフラを調達できる環境を持ちたいと思っていた」(小賀さん)。

 しかも、Webメディアのビジネスは、サービスがいつでも止められるという要素も欠かせない。その点、インフラがクラウドになるのは必然。試しながら導入できる本来のオープンソースのスピード感を活かすためには、インフラ部分で足を引っ張られないことも重要だ。「オープンソースとクラウドは相性がいい。インフラがクラウドになるのは、開発者にとっても、ユーザーにとっても価値のある提案だと思う」と小賀さんは語る。

JAWS-UGへの関わりは必然の流れ

 WordPressのコミュニティをベースにビジネスを進めてきた小賀さんの場合、JAWS-UGに参加するのはある意味必然の流れだった。 WordPressとAWSを組み合わせて利用するようになった結果、小賀氏は技術情報などを求め、JAWS-UGに参加するようになったという。「数年前であれば、クラウドは企業のものというイメージがあった。でも、個人も使うWordPressのようなツールでも、クラウドは十分メリットがある。そこで、個人からエンタープライズまで使えるようなWordPressに特化した“AMIMOTO AMI”というAMI(Amazonマシンイメージ)を作ったら、コミュニティにすごく好評で、さらにJAWSコミュニティに注力するようになった」(小賀さん)。

 自身も積極的にセミナーや勉強会に参加している。「ハンズオンで四国一周とか、仙台や山形、シンガポールやフィリピンとかにも行きましたね」(小賀さん)。最近は、1人でカバーできないので、網元起動隊という形で地域のユーザーにエバンジェリストになってもらい、ハンズオンをやれるような仕組みを作っているという。「小さい会社でも、コミュニティに積極的に参加することで、仲間がスケールできたりするんです(笑)」(小賀氏)とのことで、ビジネスとコミュニティは同一目線で扱っている。

 一方で、金春さんは会社立ち上げて10年近く、こうしたコミュニティには関わってこなかった。しかし、AWSへの依存度が高くなればなるほど、JAWSの重要性も高まってきたという。こうした中、大阪、京都、神戸の3都市のコミュニティが手がける「JAWS-UG三都物語 2014」では、実行委員長になっている。金春さんは「大阪はコアメンバーが持ち回りになっているので、いつの間にか自分がコアメンバーになっている。イベントの打ち上げで、次はお前やれやーとなる(笑)」と語る。とはいえ、イベントに長けたメンバーがおり、周りの協力も絶大なのでプレッシャーなどはないという。

いつの間にか、自分がコアメンバーになっている。次はお前やれやーとなる(笑)(金春さん)

(次ページ、カジュアルに人が集められる東京とは違う苦労)


 

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