CPUのクロックを上げ、GPUのクロックは抑えるであろう
BeemaとMullins
ここからは今後の話である。まずはKabiniの後継製品で、これが「Beema」と「Mullins」として2014年前半に投入されることは、2013年11月に開催されたAPU13で発表されている。このうちMullinsはTemashの後継で、SDP(System Design Power)が2Wと設定されているもので、これは明確にタブレットとスマートフォン向けである。
念のために書いておけば、技術的には外付けで、例えばQualcommあたりからモデムを買ってくればスマホをMullinsベースで作ることは可能だが、AMDはそうした使い方は予定していない。あくまでスマホと同等クラスの小型デバイスに使える、という意味である。したがって、メインとなるのはBeemaである。
さてそのBeemaだが、細かいスペックは発表されていないものの、性能に関する簡単な指標はすでに公開されている。
単純に言えば、消費電力あたりのGPU性能も総合性能も、Kaveri世代と比較して倍になるとされている。これをもう少し噛み砕いてみたい。まず、わかっていることは以下のとおり。
- CPUコアはKaveri世代のJagureに若干の改良を加えたPumaコア
- GPUはGCNを継承する。世代的にはSouthen Islandsということで、GCNに加えてTrue Audioなどの機能も追加されることになるだろう
- プロセスそのものは28nm
まずはプロセスだ。現在のKabiniはTSMCの28nmとされているが、これが28nmのどれかが明らかにされていない。ただ登場時期と性能を考えると、28nmのHPLではないかと想像できる。HPLを使う限り動作周波数は2GHzが上限に近い。
可能性としては、BeemaではこれをHPMに切り替えるのではないかと思われる。これにより、動作周波数は若干向上する。もっともその分消費電力も増えることになるが、Power Gatingなどで不要な回路の消費電力を積極的にカットできるから、これは絶対的なデメリットとはならない。これにより、ピークの動作周波数は2.5GHz程度まで引き上げられることが期待できる。
もっともこれはCPU側で、GPU側はもっと動作周波数を抑える必要がある。こちらはGCNベースのため、ピークの描画性能は純粋にシェーダーの数×動作周波数に比例する(実際にはメモリー帯域がボトルネックになる可能性は高い)。
前述の画像で、3DMark11のスコアがきっちり倍というあたり、動作周波数は据え置きもしくはやや削減し、その代わりにシェーダーの数が倍増しているのではないかと考える。
謎なのがメモリーだ。DDR3-1600×1chのままだと、性能のボトルネックはこのメモリー帯域になる。もちろんAMDはRichland→Kaveriでは同じメモリーを使いつつ大幅に実効帯域を改善することに成功しており、同じ技術を導入することでBeemaでも実効帯域を改善できる可能性はあるが、それだけで全部が解決するかどうかやや微妙なところだ。
ただパッケージを考えると2chというのは考えにくいし、DDR3-1866/2133は大幅に消費電力が上がるのでこれも考えにくい。このあたりは登場するまで予測が難しいところだ。ちなみにPCMark 8のスコアが倍増しているのは、PCMark 8のHomeではGPUを使うテストも含まれており、ここで性能を結構稼いでいる可能性がある。

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