日本マイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」を導入し、ワークスタイルの変革に取り組んでいるのが、人材ビジネスを展開するパソナである。モバイルデバイスとクラウドサービスを活用し、いつでもどこでも業務を行なえる環境を構築。グローバル競争力と女性の社会進出支援の強化を、ITの力で実現する考えだ。このほど、日本マイクロソフトの樋口泰行社長と、パソナグループの南部靖之グループ代表との対談が実現した。樋口社長にとっては、南部グループ代表は、大手顧客のトップというのみならず、経営者として大先輩であり、尊敬している経営者の一人でもあるという。新春特別企画として、2人の対談を2回に渡ってお届けする。
「雇用」という概念をなくす
南部 私は最初に日本マイクロソフトにお礼を言いたいんですよ。私は、かつて書いた書籍の中で触れているのですが、実は船を本社にして、釣りをしながら日本中をまわりたいと思っているんです(笑)。“ひょっこりひょうたん島”のように、突然、表れて上陸することもある。これを実現するにはITの力が不可欠ですからね。2025年にはこうした時代がやってくると思っていたのですが、それが目の前まで訪れているんですよ。
樋口 どこでも、いつでも仕事ができる環境は、まさにITによって実現されるものといえますね。
南部 Office 365のような製品が出てきたからこそ実現できることなんです。ITを活用することで、海の上でも経営ができる環境が整ってきた。まさに私が描いた時代が、訪れようとしている。「雇用」という概念をなくすということに向けて、大きな一歩を踏み出したという点では、日本マイクロソフトに感謝しているんです。
樋口 「雇用」という概念をなくすというのはどういうことですか?
南部 企業の雇用形態というのは、戦後からまったく変わっていません。家庭の主婦が社会進出したり、規制を緩和して四角いモノを少し丸くして転がす、というような若干の変化はありましたが、ちゃぶ台ごとガラっとひっくり返すような変化はありません。だが、働き方を根本的に変えていかなくてはならない。それが「雇用」という概念をなくすということにつながります。
私は、「フリーターこそが、これからの正社員である」と思っています。午前9時から午後5時まで働くというのではなく、介護しながらとか、第2子、第3子を育てながら、あるいは、サッカーをしながら、絵を描きながらというようにやりたいことをしながら、仕事をする。場合によっては、弁護士資格取得の勉強をしながらという働き方もあるでしょう。
やりたいことをやる環境を維持しなから、午前中だけ、あるいは土日だけ、またはプロジェクト単位で参加して、食べていけるだけの仕事をする。これは、フリーターと言われる人たちの仕事の仕方と同じです。ただ、これを実現するには、企業側の雇用に対する姿勢も必要ですし、年金制度を含めたセーフティネットが、国家レベルで張り巡らされることも必要です。いずれにしろ、これからの時代は、「雇用」というものが変化することになるはずです。
樋口 ひとつの仕事に固執しない働き方といえますね。
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