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マイクロソフト・トゥディ 第19回

「Windows Phone 8」が日本で発売されない理由

2012年11月10日 16時00分更新

文● 大河原克行

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日本における延期の背景

 今回のWindows Phone 8発売延期の背景には、日本においては、Windows 8によるタブレット端末の販売強化を優先するといった、マーケティング面での理由を指摘する声もあるが、実際には担当部門が異なるためその見方は正確ではない。本来の理由は、それとは別のところにありそうだ。

 関係者の話をまとめると、最大の理由は、スマートフォン端末を開発するメーカーとキャリア、そしてマイクロソフトとの3社の関係にあるようだ。

 日本のユーザーは全世界の中でも高い機能を持った製品を求める傾向が強い。併せて、日本のキャリアも付加価値製品の品揃えをよくするために、日本の端末メーカーに対して、高い品質を備えたスマートフォンの開発を優先して求めることになる。

 だが、付加価値モデルの販売数量は販売台数が限定され、しかも、日本のスマートフォンメーカーは国内市場をターゲットとしていることから、さらに販売台数が絞り込まれる。

 これが外国メーカーとの大きな差別化点になっている。

 海外でWindows Phone 8端末を発売するメーカーは、ノキアやサムスンなど、新製品のグローバル展開が可能な企業ばかりだ。それだけに、販売見込み台数は「桁が違う」という状況になる。販売ボリュームを背景にマイクロソフトとの関係を強化でき、さらに競争力を高められる海外メーカーとは一線を画すことになる。日本の端末メーカーによる国内展開に対して、キャリアが躊躇せざるを得ない理由は、この辺りにありそうだ。

9月上旬にドイツで開催されたIFA 2012にあわせて発表されたサムスン電子のWindows Phone 8搭載「ATIV S」

 あとは、こうした海外メーカーによるWindows Phone 8端末の国内市場投入だが、現時点では計画されていない。

 日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、今年8月の時点まで、「Windows 8のモメンタムは、Windows Phone 8のモメンタムへとつなげられる」と意欲的なコメントをしていた。それだけに、直前になってその目論見が崩れることは残念でならないだろう。

 そして、これが、日本における今後のスマートフォン戦略にどう影響するかも気になるところだ。

 日本マイクロソフトでは、「Windows Phone 8の日本での展開に向けて、日本のキャリア、メーカーと継続的に議論をしている」と語る。今後の国内市場投入に向けて、引き続き前向きに取り組む姿勢には変わりがないことを強調する。

 どの時点で「仕切り直し」をするのか。日本マイクロソフトの中長期で捉えた今後の一手が気になるところだ。


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