一番熱がこもっているのは「トピックス」コーナー
―― 『世界の植物』は、単に植物の写真と名前の由来を説明しているだけでなくて、その植物に関する様々なエピソードや考察が盛り込まれいるので、記事1つとっても、読み物としてすごく濃いですよね。先ほど「名前の由来をとっかかりにしつつ」とおっしゃっていましたが、そういう情報は意図的に盛り込むようにしているんですか?
高橋 はい。単に植物の写真を載せて名前の由来だけを説明するなら、誰でも同じようなものが作れますし、それだけじゃ読んでてつまらないですから。それで各植物のページにいろいろ(情報を)載せたり、それに飽きたらず、植物にまつわる面白いこと、あるいは普段見えない部分の本当のところをまとめた「トピックス」というコーナーを設けたりしました。実は、一番やりたいのはそういうところなんです。写真も載せたいし、名前の由来もまとめたいけれど。
―― 確かにトピックスは「枝の構造計算」や「雌雄異株」など、独創的なテーマが多くて興味深いです。
高橋 植物について調べていると、そういう色々な疑問が浮かんでくるんです。植物の構造的なところから、歴史的なエピソード、それにやっぱり名前に関する部分ですね。
たとえば、植物の和名だけみても、桐と直接関係がないのに「○○キリ」という名前だったり、ビワと別の分類の植物なのに「△△ビワ」と呼ばれたりするものはけっこうたくさんあります。そのひとつひとつの由来を調べるのもいいですが、全部まとめて考察することで見えてくる部分もあるんですよ。そういうのを調べるのも楽しくて、Webサイトをやる前から名前の由来と一緒にWordに書いていました。
―― 趣味の入り口に立ったばかりでは見えない、一段上の面白みを堪能している感じですね。
高橋 そうかもしれませんね。先にリンネの件を話しましたが、学者が自由に命名していた時代の学名データベースも現在に残っているんです。これも調べていくと色々と面白いんですよ。探検の費用を出してくれた人に学名を献上したり、大きなイベントがあるとそれにちなんだ名前があふれたり。
トピックスにある「オオオニバスの学名について」に詳しいんですが、19世紀前半に英国のビクトリア女王が即位したときは、「ビクトリア某」という名前の植物がたくさん付けられました。そのブームの最初の植物はアマゾンで発見されたトゲだらけの植物「オオオニバス」なんですが、それが「ビクトリア・アマゾニカ」と名付けられまして。果たして女王が喜んだのかどうか……(笑)。
―― (笑)。そういう情報はどうやって仕入れているんですか?
高橋 植物関連だと、各地の植物園を巡ったり、植物事典などの参考書を開いたりという具合です。参考書は高価でもできるだけ買って手元に置くようにしています。図書館に通ってコピーを取るだけで時間がかかりますから。
植物園では色々な植物を見てまわるわけですが、間違った名前を看板に出している場合もあるんですよ。それを見つけて、「本当に正しい名前はコレなんだよね」と悦に浸ったりもしています。付けられた名前の順番を調べて命名の経緯をまとめても、たぶん誰も読んでくれないですけど、私は楽しい(笑)。
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