このページの本文へ

古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第2回

深く追求するほど、知は広がっていく――『世界の植物』の喜び

2012年08月24日 12時00分更新

文● 古田雄介

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アカシアではないのに、なぜ「ニセアカシア」?

―― まずは、『世界の植物』を始めたきっかけを教えてください。

高橋 直接のきっかけは「ハリエンジュ」という樹木です。すごくいい香りがして、蜂蜜もとれるという、私の好きな植物なんですが、その別名が「ニセアカシア」というんですよ。アカシアそのものとは関係ないし、見た目も違うのに。それで気になって名前の由来を調べたのが最初です。10年くらい前ですね。

 そこから他の色々な植物の名前も調べるようになったんですが、当初はただ自分用にWordでつらつら書いていただけでした。Webサイトで公開しようと思ったのは、20本弱のストックがたまった頃です。せっくだからやってみようと思いまして。


―― 『世界の植物』の2年前、2004年4月に『セネガル・ダカールのホテル・レストラン・ガイド』を立ち上げています。その経験からという感じですか?

高橋 そうですね。それにWebサイトの知識は、仕事で社内サイトを作ったときにある程度つけていましたから。『セネガル…』を作ったのも、当時の仕事が大きく関係しているんです。社内サイトなども作る部署から海外の仕事をする部署に異動して、最初に赴任したのがダカールでした。何回かに分けて2ヵ月半くらい滞在して、土日は現地の植物園を巡ったりしていましたが、日本語のガイド情報が全然なかったので、こういうのがあれば役に立つかな、と思ったんです。

『セネガル・ダカールのホテル・レストラン・ガイド』。最終更新は2006年8月。『世界の植物』スタートの1ヵ月前だ


―― その頃から植物の写真を撮っていたんですね。

高橋 ええ。植物自体、園芸の好きな両親の影響が大きくて、子供の頃から好きでした。大学生の頃に植物をスケッチしたり、自分でも育てたりしていましたし。社会人になってしばらくは途切れていましたけど、ずっと興味は持っていましたね。

 実は、『世界の植物』もダカールに赴任したころ撮りためた写真が元になっています。名前の由来をとっかかりにしつつ、日本では普通見られない植物の写真をたくさん載せたものを作りたいという思いもあったんですよね。


―― いろいろな経験が『世界の植物』につながっていますね。ちなみに、ニセアカシアと呼ばれる理由は何だったんですか?

サイトの中でもニセアカシアの由来については触れている

高橋 それがね、名付け親のミスなんですよ。もともとハリエンジュには別の名前があったんですが、18世紀の植物学者のリンネが、別の植物に付けられていたニセアカシアという名を、『植物の種』という本に残してしまったんです。それなら、後年の学者が修正すればよさそうなものですが、現在の命名規約によって、それは不可能なんです。

 昔は学名の付け方に制約がなかったので、いろいろな学者が同じ植物に別の名前を付けていました。近年になって、リンネのこの本を出発点にすることが決まって、たとえ間違った名前があっても先に付けられたものは変えられないんですよ。

ハリエンジュは「繁殖力の高い外来種で、河原なんかにはびこって迷惑種扱いされています」とのことだが、それでも高橋氏は好きだという。ニセアカシアという名前への憤慨が根底にあるのか訊ねると、「そうそうそうそう!」と強く肯定した

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン