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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第95回

【ナムコ世代必見】iPadに降臨した、FM音源の皇帝「iYM2151」

2012年05月26日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ずっと付き合えなかった彼女といまだに付き合えていない

―― FMシンセのハードルの高さは、イメージする音の変化とパラメーターがなかなか一致しないことだと思うんですが、皆さんはどう克服されたんですか?

佐野 ここは良い質問ですね。ちなみに僕は挫折したクチなんで。だからiYM2151もイージーエディットで遊ぶのが関の山ですから。

―― あらっ、じゃなんでFM音源をやろうと思ったんですか?

佐野 ずっと付き合えなかった彼女とこう、何とかして付き合いたい一心で……でもいまだに付き合えていないという、そんな感じでしょうか。そして付き合うことができた、この3人がうらやましいと。

―― というようなアナログ派の疎外感みたいなものはあると思うんですよ、いまだに。

細江 それはあるでしょう。

細江慎治(株式会社スーパースィープ代表取締役) 株式会社ナムコにて87年にドラゴンスピリットの音楽を手がけて以降、鉄拳シリーズ、リッジレーサーシリーズ等、様々なゲームの音楽を作曲。その後ゲームサウンドを中心に手がける株式会社スーパースィープを設立。

―― では付き合いはじめる前に基本を確認すると、オペレーターはそれぞれ正弦波の発振器で、どれをキャリアにするか、モジュレータにするの組み合わせで、8つのアルゴリズムがあると。で、なんでこの組み合わせなんですか?

阿保 YM2151はこれしかないということですよね。

佐野 FM8なんかは自分でつなげられるんで、アルゴリズムはいくつあってもいいんですけどね。

阿保剛 (株式会社MAGESゲーム事業部) コンポーザー。ネットに上げられた膨大なFM音源作品を佐野さんが検索で見つけスカウトされてしまったらしい。iYM2151ではプリセット音色の開発を担当。

※ FM8 : Native Instrumentsが開発した現代のソフトウェアシンセサイザー。8つのオペレータを組み合わせて自由にアルゴリズムが作れる。富士通のパソコンにあらず。

―― アルゴリズムがあらかじめ決まってるところが、どうにもとっつきにくいんですよね。

細江 最初からオペレータが4つあると思わなければいいんですよ。まずは2つから。

阿保 まず基本からですよね。

―― おお、なるほど。それで実際触ってみると、FM音源ってこんなにシンプルだっけ? っていう意外性がありますね。

佐野 実はパラメーターってそんなに多くないんですよ。それでいろんなゲームのいろんな音が出ていたのは、それぞれゲーム会社の人がドライバーを作り込んでいったからなんですよね。デモ曲もそういう作りになっているんですが、パラメーターをステップごとに変えられるんで、キックとスネアを交互に出したりできるんですよ。

「SYNTH」画面で「PRO」ボタンを押すと、音色設定のパラメーターが一望できる。下段の三行はすべてLFO、上段のAR/DR/SR/RR/SLはエンベロープだから、今のモデリングシンセよりも圧倒的にパラメーターの数は少ない。

―― 同じトラックの中で?

佐野 エフェクターもないのにエフェクトが効いているように聴こえる箇所もあったり。そういう打ち込みのテクニックはミキサーでソロにして聴くと分かるんですよ。

―― 打ち込みを前提にするなら、FM音源はアナログのシミュレーターより合ってそうですね。

佐野 コンピューターとシンセサイザーの音源が密接に関係を持ったのはFM音源が最初なんですよね。それまではビープ音だったわけですけど。

―― じゃあまだFM音源には可能性があるかもしれないじゃないですか。

佐野 ヤマハさんの音源開発者がびっくりしていましたからね。デモでこんなにできるとは思わなかったと。このチップを作った当時も、そんなに作りこむとは思っていなかったと思うんですよね。ほかも大体そうじゃないですか。

―― DS-10然りですよね。

佐野 そうですよ、あれもあんな風になるとは思ってませんでしたから。

―― やっぱこれ3000円は安いんじゃないかなぁ。

佐野 そこ何度も言って下さい!

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