※この記事は吉村作治氏のメールマガジン「吉村作治の週刊e-パピルス- エジプト考古学者のマネジメント学 -」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
原発事故後、頻繁に取り沙汰されているエネルギー利用の行方。文明にとってエネルギーは不可欠。自然エネルギーとは、自然との調和とは……吉村作治氏は、文明の歴史を紐解き、エネルギーそのものについて掘り下げ、エネルギーの原理を捉え直すべきと説く。
文明を維持したり、発展させたりするために不可欠なものは、“エネルギー”であることは言うまでもないことです。人類はこの“エネルギー”をどう調達してきたかが、真の人類の歴史なんです。人類の歴史約500万年のうち、その0.2%にしかならない、今から1万年より前の時代は、エネルギーのことなんて考えていなかったでしょう。火の発明が今から20万年前と考えても人類の歴史の4%という短い期間の話です。
ワークシェアの原型から人間圏の形成へ
人間が、自身のエネルギーを使って事を行うには限界があります。自分の生活における活動の中でも、やれないことがあります。物を運ぶにしても、その重さは限られています。
自分ひとりで無理な時には他人を巻き込み、人数を2人、33人と増やしていくわけです。また、複数の人間が共同作業をしますと効率も良くなりますので、時間の短縮にもなるわけです。こうしてワークシェアの原型ができ、共同作業をすることで共同体ができ、村へ町へと発展していくわけです。
もちろん、人間同士の共同作業とは別に、動物の力を借りることがあります。農作業における運搬、耕作などの作業がそれです。その他に、牛や羊から乳を取ることも重要なことです。動物を家畜化したり、土地を耕し、種を植え実を実らせそれを収穫したりといった一連の作業は文明の起源ですし、人間圏の形成に大きな役割を持っています。
文明イコールエネルギーという所以です。この辺までは、人間は、自然とうまく調和していたのです。次に、風とか水とか火と言った、自然のエネルギー利用が始まります。
そして、蒸気機関が発明され、エンジンができる最近まで、文明は風や水の力と人間の力を上手に使い、遠隔地に行っていたのです。この3つのエネルギーは地球に何の害も与えないのです。
自然のものに内在する危険
最近は原子力発電がひとり「悪い子」になって、それ以外の「自然エネルギー」と称されているものなら何でもいい風な論調が盛んになっています。それはそれで、トレンドとしていいのでしょうが、私たちは、エネルギーという言葉のカテゴリーというか原理を再考する必要があるのではないでしょうか。
文明にとってエネルギーは不可欠です。人間そのものの持っているエネルギー、生きること自体、エネルギーなくしては続けられません。次に、馬や牛などの動物のエネルギー。その前に、人間がエネルギーを体内で作るための燃料、すなわち食物が必要です。食べるということは食べられる対象物-動物・植物を問わず-のエネルギーを摂取しているわけです。
他の動物も、動物や植物を食しエネルギーを得ていますし、植物だって土や水、太陽光などのエネルギーを摂取しているわけです。よって、人間の作る文明だけがエネルギーを必要としているのではなく、地球上に存在する生命体が全てエネルギーを必要としているわけです。
ですから、「自然エネルギー」なんて区別すること自体が意識の低さを示しています。例えば、石油にしても石炭にしても、いわんや原子力発電の燃料であるウランにしても、全て自然のものなんです。そして、全ての自然のものには危険が内在しています。その程度の差、すなわち危険度が違うのです。私たちがこの原理をしっかりと学べば、その対策は立てられるのです。
【筆者プロフィール】 吉村 作治
10歳の時に読んだ、「ツタンカーメン王のひみつ」に魅せられ、エジプト考古学者となる。現在は早稲田大学名誉教授、工学博士(早大)。1964年に早稲田大学入学後、カイロ大学考古学研究所留学。念願のエジプト発掘を始め、早稲田大学人間科学部、国際教養学部教授を経て、日本初の完全インターネット大学、サイバー大学を創設し初代学長を務めた。現在、毎月エジプトに出かけ、その合間に執筆活動、講演、テレビ出演、お祭り参加等、日本中を飛び回っている。 「ビジスパ」にてメルマガ「吉村作治の週刊e-パピルス - エジプト考古学者のマネジメント学 -」を執筆中。
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