※この記事は伊藤亮太氏のメールマガジン「時代を勝ち抜くマネー学 - これからの生活に活かす -」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
2012年第一四半期、前年同期で上場企業のMBOは減少。日銀の金融緩和政策はどう影響したか?伊藤亮太氏が、ファイナンシャルプランナーの立場から、TOBやMBOの動向を解説する。
今回は2012年第一四半期における上場企業のTOBやMBOの動向についてお話ししたいと思います。
第一四半期におけるTOBは18件と前年同期には14件でしたので増加しました。一方でMBO案件はジャスダックに上場していたベンチャーリパブリック1社のみと、前年同期7件に比べ大幅に減少しました。これは、第一四半期においては、日銀の金融緩和政策を発端とした株価上昇の結果、MBOを行ううまみがなくなったことも影響しているのではないかと思われます。
こうしたM&Aという観点から株式投資を行うことを考えた場合、私たちにとってうま味となるのは実際にM&Aが発生した場合のプレミアムになります。株価が安くなっていることもあり、公開買付における株価への上乗せ価格(プレミアム)は高くなりやすい傾向にあるのです。
TOBに関して、大型案件ではユニーによるサークルKサンクスの完全子会社化がありました。買い付け金額は712億円、プレミアムは39.8%でした。その他、フジ・メディア・ホールディングスによるサンケイビルの完全子会社化がありました。買い付け金額は313億円、プレミアムは138.7%と第一四半期のなかでダントツ高いプレミアムとなっています。
第一四半期のTOBのプレミアムを調査してみると、ほぼ半数が+50%以上と非常に高いプレミアムをつけて買収しています。実はこのプレミアム、年々高くなる傾向がありまして、2006年頃は20~30%で推移していたものが、今では50%は当たり前になってきています。それだけ以前に比べれば株価が下がっているということと、大幅なプレミアムをつけるだけの価値があるにもかかわらず市場では放置されている企業が多いということがいえるのではないでしょうか。
第一四半期においては、塾や介護、ビル管理、食品など幅広い業種でTOBが行われました。株式市況にもよるとは思いますが、今後も生き残りをかけた合従連衡や優良企業の買収が進むことは十分想定できますので、割安でかつ将来有望と思われる企業や、兄弟会社、親子上場企業などに着目されて、TOBやMBOしそうな企業を発掘していくと面白いといえます。
※メルマガ「時代を勝ち抜くマネー学 - これからの生活に活かす -」では、連載「投資に活かせる豆知識」で、時事やトレンドを踏まえて、投資について解説中。
【筆者プロフィール】伊藤亮太

経済評論家、ファイナンシャルプランナー。スキラージャパン株式会社取締役。
証券会社にて、営業、経営企画部門等を経て、2007年11月にスキラージャパン株式会社設立に参画。ファイナンシャルプランナーとして、個人の生活設計(ニーズに合った適切な金融商品の選定、保険やローンの見直しなど)を中心としたマネー・ライフプランニングの提案・サポート等を行っている。
『金融入門 基本と常識』(西東社)など著者多数。講師・講演歴も多岐にわたり、金融機関、大学等で、資産運用関連、金融業界動向、ファイナンシャル・プランニングなど講演を行っている。
ビジスパではメルマガ「時代を勝ち抜くマネー学 - これからの生活に活かす -」を執筆中。

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