※この記事は牧田 幸裕氏のメールマガジン「日経を使った"旬の事例"ケーススタディー最新情報でケース分析」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
昨年12年ぶりに復活し、目標を上回って売り上げたサントリーの「はちみつレモン」、トヨタが4月に発売した、かつて若者に人気だった小型スポーツカー「86(ハチロク)」……増える復刻商品の成功のキモはどこにあるのか? 牧田幸裕氏が解説する。
皆さんはターゲット顧客の高齢化について考えたことがあるだろうか?
分かりやすい例でいえば、アイドルのターゲット顧客は高齢化する。本ケース※のハチロクが売れに売れていた頃、あるアイドルグループがデビューし、売れに売れていた。
しかし、その人気は数年しか持たなかった。
なぜか。ターゲット顧客が高齢化するからだ。このグループがデビューしたころのターゲット顧客が中学生から高校生だとする。そうすると、6年後には、中学1年生は大学1年生に、高校3年生は、社会人2年生になる。デビュー当時、あれほど熱狂した提供価値に、ターゲット顧客が価値を感じなくなるわけだ。少女たちは大人になり、大人の音楽を聴くようになる。
かつて一世を風靡した「おニャン子クラブ」や「ピンクレディ」が再結成し、CDを発売することがある。でも、当然のことながら、かつてのようなミリオンセラーとなることはない。なぜならば、提供価値が「懐かしい」だけだからだ。
「懐かしさ」以外の価値を
一方で、バンダイは仮面ライダーのガンバライドカードで大変な高収益を上げている。GMSのおもちゃコーナーに行くと、ガンバライドのゲーム機が置いてある。多くのゲーム機は、ラーメン二郎並の大行列で、子どもたちは100円を入れ、ゲームを楽しむ。ゲームをすると仮面ライダーカードを1枚手に入れることができる。
ゲーム付きとはいえ、原価数円のカードが、100円で販売される。しかも大行列で、飛ぶように売れていく。収益性が極めて高いビジネスモデルだ。
そこでは、父親たちが100円玉をジャラジャラさせながら、カードを手に入れ喜ぶ子どもたちを嬉しそうに眺めている。
父親世代は、スナックに仮面ライダーカードが付いていた。しかし、子どもの頃の可処分所得では、なかなかカードを手に入れられない。しかし、今なら「大人買い」ができる。子どもたちは、数十枚のカードを持ち、時には数百枚のカードを持つ。300枚のカードを持つとして、3万円の投資だ。皆さん、仮面ライダーカードごときに大枚を投じる、この父親をバカだと思うでしょう?
でも、これが「復刻版」の成功のキモである。「懐かしさ」以外に、購買できる自分に対する満足感も父親の満足感が成功のキモなのである。この辺の心のくすぐり方を価値として付加しているモノでないと「復刻版」での成功は難しい。
※「日経を使った"旬の事例"ケーススタディー最新情報でケース分析」vol.026では、自動車や食品などの「復刻版」市場が拡大しているというニュースを取り上げ、トヨタが発売した、かつて若者に人気があった小型スポーツカー「86(ハチロク)」、イタリアフィアットのアルファロメオの中型車「ジュリエッタ」といった「復刻版」の成否を予測している。
【筆者プロフィール】牧田 幸裕

信州大学経営大学院 准教授。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。アクセンチュア戦略グループ、サイエント、ICGなど外資系企業のディレクター、ヴァイスプレジデントを歴任。2003年IBMビジネスコンサルティングサービスへ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。2006年信州大学大学院経済・社会政策科学研究科助教授。07年より現職。著書に「ラーメン二郎にまなぶ経営学」、「ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問」、雑誌連載など多数。
「ビジスパ」にてメルマガ「日経を使った"旬の事例"ケーススタディー最新情報でケース分析」を執筆中。

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