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ビッグデータ on クラウド分野でAmazon S3と勝負

DRを意識させないクラウドストレージに挑むBashoとIDCF

2012年09月28日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月27日、IDCフロンティアは米バショー・テクノロジーズ(Basho Technologies)と共同でプライベートセミナーを開催した。セミナーで登壇したバショー・テクノロジーズCEOドン・リパート氏はビッグデータやI/O性能な重要なアプリケーションに最適な分散ストレージ製品を提供すると説明した。

NoSQL DBとS3互換の分散ストレージを用意

 バショー・テクノロジーズはNoSQL型データベースと分散ストレージを手がける新興のITベンダー。7月18日には、IDCフロンティアがバショー・テクノロジーズに対して610万ドルの投資を行ない、Bashoの分散ストレージ技術をIDCフロンティアのクラウドサービス・データセンターに組み込んでいくことを発表している。こうした経緯から、今回BashoのCEOが来日し、ユーザーやプレスに対して製品・サービス概要を説明するセミナーをIDCフロンティアと開催することになったという。

米Basho Technologies CEOのドン・リパート氏

 バショー・テクノロジーズ CEOのドン・リパート氏は、従来「規模」を重視していたITインフラが「エラスティック(伸び縮みする)」な方向にシフトしていると指摘し、コモディティ化されたコンピューター、SDN(Software-Defined Netwrok)とともに、分散型のデータ処理の重要性を訴えた。そして、現在多くの企業が対峙するWeb、SNS、モバイル、クラウドなどのビッグデータ化に対して、ストレージは分散インフラ、書き込み重視、可用性、スケールアウト、超低遅延、運用の容易さ、などさまざまな要件を満たす必要があると説明した。

 こうした要件を満たす同社のNoSQL型データベースである「Riak」は、高い可用性、拡張性、そして低廉なコストを実現するという。現在、Riakはオープンソース版のほか、マルチデータセンターのレプリケーション、監視や24時間のサポートを含む有償版「Riak Enterprise DS(EDS)」が提供されている。また、同社は2012年3月にAmazon S3互換のAPIを持つオブジェクトストレージ「Riak CS」をリリースしている。Riak CSではREST経由でオブジェクトを取得し、それらを細かく分割。Riak EDSの各ノードに最適配置するという。Riakではマスターノードが存在せず、対等のノード同士で分散的に書き込みを行なうという特徴を持つ。

BashoのRiak製品群

Riak CSとEDSの関係

 リパート氏によると、Riakは企業のドキュメント管理やヘルスケア情報の管理、複雑なイベント管理、コンテンツ配信など幅広い実績を持っているという。さらに、日本法人のバショー・ジャパンが設立されたことも発表され、日本語のサイトもオープンした。

分散データセンター+分散ストレージ

 IDCフロンティアでは、このRiak CSを同社のデータセンター上に展開していくという。冒頭、挨拶したIDCフロンティアの真藤豊氏は、「ビッグネームがどんどんBashoのテクノロジーを導入している」と述べ、高い期待を寄せた。また、最新の省エネ設備を導入した福島県の白河データセンターの竣工が間近であることを明らかにした。

IDCフロンティアの真藤 豊氏

 真藤氏に引き続き、分散ストレージの前提となるデータセンターの取り組みを説明したIDCフロンティア 取締役 ビジネス推進本部長 中山一郎氏は、まず同社がデータセンターの本質として「拡張性」「耐障害性」「集積率」を重視していると説明。これを実現するために、同社では3拠点のデータセンターを相互接続する「トライアングル・メガDC構想」を進めてきたが、東京、北九州に続き、福島県の白河データセンター竣工で、この構想がいよいよ完成に近づいているという。また、通信環境の光化を推進することで、データセンター間の遅延も短縮。「東京-北九州の15msec、東京-大阪の8msecに対し、東京-白河では3.5msecという東京郊外並の低遅延を実現する」(中山氏)とした。そして、このインフラをベースに、Riakの分散ストレージ環境を展開。DRやBCPを意識させないストレージインフラを日本のユーザーに、低廉な価格で提供していくとアピールした。

IDCフロンティア 取締役 ビジネス推進本部長 中山一郎氏

距離に依存しない低遅延なDC間接続を実現

 実際のクラウドストレージサービスの概要を説明したビジネス推進本部 副本部長 霜鳥 宏和氏はクラウドストレージのAmazon S3のパフォーマンスの課題に言及した。「パフォーマンスではなく、品質が安定しないという声をよく聞く。弊社では親会社のヤフージャパンと協力した検証では、最大で10倍、厳しい条件でも2倍のI/O性能差が出ている」と述べた。また、Riakはオープンソースバージョンも公開されていることもあり、技術仕様がブラックボックス化していないこともメリットとして挙げた。さらに分散ストレージ環境を構築するデータセンターが地理的にも分散しており、レプリケーションが標準装備されているため、災害体制が非常に高いことも指摘した。

 サービスに関しては、まず10月30日からトライアルをスタート。顧客の環境からS3互換APIを介して、開発や評価を行なえるようにするという。また、2012年12月からはβ版環境を用意し、実際に3つのデータセンターで広域分散させたRiak環境で利用できるにするとのこと。

 課金体系には関してはまだ検討中だが、「Amazon S3に比べても競争力のある価格を用意する」(真藤氏)と説明。よりミッションクリティカルなデータの利用を前提に、サービスの整備を進めるとした。

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