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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第30回

NTTドコモの通信障害がもたらしたケータイ業界の新たな課題とは?

これまでの常識が通じないAndroid時代のインフラ開発

2012年01月30日 09時00分更新

文● 大河原 克行

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障害を招いた、大量の制御信号とは?

 今回の通信障害では、「制御信号」の発信が問題となっている。

 制御信号とは、スマートフォンから発信されるネットワーク接続を確立させるための信号だ。スマートフォンでは、数多くのアプリケーションを利用するユーザーが多いが、アプリケーションごとに、ある一定時間で接続を試みようとしている。

 とくに、VoIPアプリケーションでは、5分ごとに制御信号を発信するという頻度だ。また、Android OS自体も、何もアプリケーションを入れていなくても28分に一度、制御信号を発信する。また、今回のようにパケット交換機とspモードを接続する伝送路で不具合があり、接続できなくなった状態になると、端末が一斉に制御信号を発信することになる。

 これは、これまでの通信設備投資への考え方では通用しなくなっていることを示したものだと言える。

 かつては、全国の人口カバー率を前提とした設備投資や、地下街やビル内といった接続できるエリアの拡充が設備投資の前提だったが、それがパケット通信の利用拡大に伴い、同時接続数を前提としたトラフィック増加に対応した設備投資へと変わってきた。

 実際、今回の新たなパケット交換機では3台での同時接続数は180万となり、従来の11台のパケット交換機の88万に比べても大幅な余力がある。同社で想定していたトラフィックも71万同時接続であり、同時接続のトラフィック量では、新たなパケット交換機で問題が発生するものではなかった。

 しかし、今回の通信障害は、制御信号というスマートフォン特有のトラフィックの急増を背景にしたものであり、通信のたびに接続、切断を行うという従来の携帯電話とは異なるスマートフォンならではの仕組みが作用している。

これまでのインフラ整備の考え方は果たして通用するのか

 山田社長は、「制御信号の急激な伸びについては、申し訳なかったが、掴めなかった」という想定外の動きであったことを認めている。

 同社では、「過去は同時接続のトラフィック量をみてはいたが、制御信号についてはみえていなかった。新たなパケット交換機では、信号量を検知できるようにする」と語る。

 NTTドコモでは、「これまでにも、1年先を予測して設備投資を行っている。ギリギリの運用環境ではない」「2015~2016年に5000万台を想定している。2015年には、2011年に比べて12倍のトラフィックになると予想する」などとするが、「今後も思っていもいないことが起こらないとも限らない。あらゆることを想定した対策が必要」とも語る。

 ドコモでは、Android OSの開発元であるGoogleや、アプリケーションを開発するソフトウェアメーカーに対して、「無線環境に適した開発をお願いしていきたい」として、頻度の高い制御信号の発信を控えるよう、関係団体などに提案していく考えであり、これを世界的な動きにしたいとする。

 だが、オープンな環境での開発が前提となっているAndroidにおいて、これをルール化するというのはNTTドコモの提案だけでは現実化しない。このあたりを世界的な動きにつなげることができるかは大きな注目点だといえよう。

 今回の通信障害は、ユーザーに対する通信がつながらないという一時的な影響だけでなく、通信設備投資の考え方を見直す必要があること、そして、ソフトウェア開発の新たなルールづくりという点でも課題を投げかけるものとなった。

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