大学院では音楽検索が専攻だった
―― 開発期間はどれくらいですか?
早川 2011年の秋くらいからですね。
―― じゃあすぐにできちゃった感じですね。
早川 僕は元々こういう仕事をやっていたので、いっぱいライブラリーを持っているんですよ。音楽検索が専攻で論文もそれで書いているんで、ある程度組み合わせでできちゃったんですね。
―― 「音楽検索」って何ですか?
早川 その頃は「ミュージック・リトリーバル(music retrieval)」という言い方をしていて、大学院では音楽をどういう風にジャンル分けするかをやっていました。音楽をデータ的に解析して、これは四つ打ちだとか、これはエイトビートだとか、そういう要素で判別していく研究をやっていました。
―― それはオーディオデータそのものを解析するということですね?
早川 そうですね、音そのものを扱う研究をしていました。周波数帯域を細かく分析して似ているものを探すとか。当時の研究だと曲のジャンルまでは分からなかったんですが、CDの年代までは何となく分かったとか。年代で言うと音の癖があるんですね。その分析で学会では圧倒的に有名なのが後藤真孝さんで。
―― ああ、あの産総研の。
早川 はい、いま初音ミクの方でご活躍されていて。その方が僕が修士の頃にはビートを割り出すシステムとか、そういうものの第一人者として活躍していて、僕はそれを読んで勉強していたんです。
―― それで民族音楽が好きというのは面白いですね。やっぱり普通の音楽はつまらなかった?
早川 僕は普通のバンド活動はしてこなかったんです。ドラムにベースがいてギター、という普通の編成のバンドをやったことが基本的にはない。一番最初にやったのがガムラン(インドネシアの音楽)とピアノの二人組で、そこの青い部屋※で。
※ 青い部屋 : 東京渋谷にあった作家・シャンソン歌手の戸川昌子さんがオーナーの有名なバー。40年以上に渡って営業を続けたが、経営責任者の資金持ち逃げにより経営難となり、2010年末に閉店。現在はLast Waltzというライブハウスになっている。
―― そこはIT系に最適化しようと思ったりはしなかったんですか? 分かりやすくテクノとか。
早川 僕の中では民族音楽をデジタル的に解析してやっているという意識はあるんですよ。現地に行ってガムランとかを録って全部分解して、結構電子的な作り方をしているんです。それを、そう見せないというのが僕のやり方で。それともう一歩、ポップスという大きなシーンを狙ったからでもありますね。東京エスムジカをやる前は歌モノも作ったことはなかったんですけど、ポップスのフイールドに乗せられる形にまとめることができて、その割にマニアックな方向性も作ることができたという点で、僕は傑作だったと思っているんです。それをやらせてくれたレコード会社の懐の深さには感謝しています。
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