ソーシャルに音楽の話題を持ち込むのが狙い
―― これは早川さんの活動にとって、どういう位置づけになるんですか?
早川 まず音楽をソーシャルオブジェクトにしたいということなんです。TLの話題が、面白いニュースとか、iPhoneのアプリの話とか、猫動画とか、音楽はその下だと思うんですよ。もっと音楽の話題がいっぱい流れてほしいと思うんですよね。そういう理想に向けての一歩だったりするんですね。
―― YouTubeにも再生履歴に対するおすすめ動画は出ますけど、あれとはどう違うんですか?
早川 あれは横の交流がないんですが、これはTwitterアカウントで、ユーザーの顔が見えるようになっているというのがあります。もうひとつは、Music Surfは曲とアーティストの検索結果しか使っていないので、音楽だけを求める人には類似動画の検索精度が高いということが言えます。
―― 確かにこの手のリコメンドサービスって使えないものが多いんですが、Music Surfは結構使えますよね。僕もこれでブラジル音楽にハマりました。このマッチングのアルゴリズムはどうなっているんですか?
早川 アルゴリズムに関しては僕がやっています。ネット上のメタデータを拾ってきて、それでYouTubeの動画を検索して、一致するものを探すというプロセスが、ずっとバックで走っているんです。それが検索結果を貯めておいてくれるので、それを表示するというそれだけのシステムです。
―― ユーザーが押した「いいね!」みたいなものは、検索結果に応用していますか?
早川 もちろんデータの蓄積はしていますが、それをどう利用するかはまだ分かりません。理想としては「イイネ!!」を押して作ったプレイリストをツイートしてほしいと思っているんです。Spotifyは集団の中の音楽マニアがリストを作って見せてあげる。それで仲間の中で交流がとれて、好きな音楽が発見できるのがいい。日本の場合は権利の問題で、それができるシステムがほとんどない。でもYouTubeを使うと、それに近いものが擬似的にできるというわけです。
―― では音楽活動とは別のもの?
早川 こっちはリスナーに近いですね。アーティストの気持ちでサービスを作ると失敗すると僕は思っていて。
―― ああ、それは言えているかも。
早川 よく「アーティストのために良いサービスを」という言い方をするんですが、使うのはユーザーなので意味はないかなと僕は思っているんです。だからアーティストのエゴは出さない。それが大事な事かなと。
―― 全然エゴは見えないですもんね。じゃあ何のためにやってるの、という話にまたなるんですが。
早川 多少なりとも現状に違和感とか危機感を持っているからでしょうね。何が正解かは分からないけど、誰かが少しづつ動いていかなければならない状況にはなっている。でもアーティストである以前に、音楽ファンじゃないですか。僕は正直言って、これで日々楽しんでいるんです。2日に1度くらい自分の好きなバンドが増えていくこの喜び。まずユーザーとして音楽にどう接したいか、それを考えたいというのはあるかもしれませんね。
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