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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第76回

Sandy世代でどう変わった? 新MacBook Airをチェック

2011年09月22日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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パフォーマンスは上がったが体感差は小さい
発熱の増加が評価の分かれ目

 そして、最後の4つめのポイントこそ、もっとも大きな変化と言える。

 新モデルでは、CPUを含むプラットフォームをSandy Bridge世代へと変更している。旧モデルではCore 2 Duo世代だったものが、Core i5(BTOではCore i7)になる。純粋な演算能力としては、軽く倍以上になっていると期待できる。なお、GPUはGeForce 320Mから、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000に変わったが、こちらはCPUほどドラスティックな変化はないと考えられる。

 では、実際、体感速度はどうだろう? 率直に言えば「あれ、あんまり変わらないかも」というのが本音である。もちろん、高速化はしているのだ。例えば、H.264を使ったエンコードの速度(CPUのみを利用)は、おおむね2.2倍になっていたし、「動作が重い」と感じるシーンも減っている印象だ。だが、日常的な「アプリを呼び出して使う」「ウェブを使う」というシーンでは、CPUの差ほど速度差を感じない。

 これは間違いなく、元々MacBook Airが高速だったからだろう。MacBook Airの速度を支えていたのは「フラッシュストレージ」のアクセス速度だ。ストレージの速さが操作を妨げないため、CPUスピードの違いを埋めてしまっているのである。

 唯一、かなりの差を感じたのは仮想化ソフト「Parallels Desktop」を使った時だ。旧モデル(下位機種であるため、メモリーが2GBしかない)では速度的にかなり苦しい印象を受けたが、新モデルではメモリーが4GBになったこともあってか、かなり快適さが増している。なにしろ、先頃公開されたWindows 8の「Developer Preview」の軽いテストすら行なえてしまったほどだ。

 バッテリー駆動時間も、特筆するほどの変化はなかった。今回は輝度を真ん中に設定し、Twitterクライアント「Echofon」で1分に1度情報を更新するという形でテストしてみた。すると旧モデルでは約4時間18分、新モデルでは約4時間12分動作した。若干短くなってはいるが、このくらいならば誤差レベルだ。

 他方で、はっきりと違いを感じたのは「発熱」だ。アイドル時でも多少発熱が高くなっていると感じられるほかに、フルパワー稼働時の発熱も高い。また、発熱が高まるまでの時間も短いように感じられた。極端に不快なほどではないが、この点では旧モデルが優秀であっただけに、ちょっと残念に感じる。

MacBook Air新/旧モデル各部の温度 放射温度計による測定、室温は25度。フルパワー時はH.264動画エンコード状態

 伝統的に、どうもMacは放熱処理がうまくないのか、発熱が大きく感じる傾向にある。今後もこのレベルで抑えてくれるなら、さほど大きな問題ではないのだが……。

 さて、まとめである。安価だが実用域で十分なスピードを持ち、起動が速くてバッテリー駆動時間も長く、持ち運びやすい。「高速なストレージを使い、CPU速度に極端に依存しない、薄くて使いやすいノートパソコンを作る」というMacBook Airの美点は、新モデルでも変わっていない。CPUパワーが大幅に上がったためか、残念ながら発熱は上がっている。だが今後のニーズを考えると、いつまでもCore 2 Duoレベルというわけにもいかないだろうから、仕方がないところではある。

 逆にいえば、このレベルのCPUでこれだけ発熱するということは、いくつかのハイエンド・モバイルPCのような高度な熱設計はなされてない、ということでもある。おそらくSandy Bridge世代のUltrabookも、設計やパーツ構成を考えると同じような特性を持つと考えられる。

 今日現在、この程度の価格で買えるこのような性能のモバイルノートはMacBook Airだけだが、今後はUltrabookの登場で、相対的な地位も変わってくるだろう。だがそこで、MacBook Airほどの仕上げやパッケージングの良さを実現した製品は、どのくらい出てくるだろうか?

 1年以上先を走ったアップルの優位は、そうそう縮まることはないかもしれない。

お勧めする人
・快適な速度で長時間動くモバイルノートが欲しい人
・低価格でも見栄えのいいモバイルノートが欲しい人
MacBook Air(11インチ、評価機構成)の主な仕様
CPU Core i5(1.60GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 11.6型ワイド 1366×768ドット
ストレージ SSD 128GB
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェース Thunderboltポート、USB 2.0×2、ヘッドホン出力
サイズ 幅300×奥行き192×高さ3~17mm
質量 約1.08kg
バッテリー駆動時間 ワイヤレス環境 約5時間
OS OS X Lion
価格 10万2800円

■Amazon.co.jpで購入

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)。最新刊は「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)。

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