アニメファンにアピールしたいのは、輪郭調整(中域)がアニメの描線の再現に大きな効果があること。マイナス方向に調整すると、輪郭の描線につきまとう不自然な強調や擬似輪郭のようなものがすっと収まる。
精細感調整の場合、アニメの背景画の生い茂った樹木の葉の一枚一枚がはっきりと再現されるような効果はむしろ精細感調整(中域)の方が効果が大きく、精細感調整では微細な質感の違いが出てくるように感じた。アニメの背景などにおいては、精細感を高めたいと思った時は精細感(中域)を調整した方が、ディテール感がよく出てくる。これは実写と比べて手描きの絵の方が、信号が含む周波数帯が低めであるためだろう。
この機能に夢中になり、実機でさんざん試してみたのだが、これがなかなか難しい。難しいというのは、映像ソースや作品によって調整値がプラス方向やマイナス方向と極端に変わり、どんな作品にもマッチする調整値が作れないという意味。
アニメ作品でいろいろと試したところ、地デジソースでは輪郭調整(中域)だけでなく、精細感調整(中域)も弱めた方が好印象。これはノイズ感が強調されがちになるためだ。逆にBDソフトになると、輪郭補正(中域)を特に弱める必要もないし、精細感調整(中域)はプラス方向の方がディテールが出る。
結論としては、もともとかなりマニアックな機能でもあるし、見る作品ごとにじっくり追い込むような使い方をするべきものと感じた。ひとつひとつの調整機能がよく出来ており、ベストの絵が出てきたときの喜びは筆舌に尽くしがたいものがある。考え方はいろいろあると思うが、AVの楽しみのひとつは、こうしたさまざまな機能を使いこなして好みの映像に追い込むことだと思う。
とはいえ、いつもそこまでの調整を要するのは、さすがに面倒くさいと感じる人もいるだろう。その点でありがたいのが、これらの画質調整機能にはいくつものプリセット値が用意されており、基本的にはそれらを選ぶだけで問題なく使えるのだ。
プリセットメニューは、大きく分けて2種類ある。1つ目は「モニター種類」(液晶テレビ/プロジェクター/有機ELテレビ/プラズマテレビ/該当なし)と、「画質モード」(リビングおまかせ/シアターおまかせ/パワフルおまかせ/カスタム1/カスタム2/ダイレクト)の組み合わせ。
これらを使えば、組み合わせるディスプレー、そして視聴環境や好みに合わせたおすすめの画質設定になる。(モニター種類は「おまかせ」のついた画質モードにのみ有効)
2つ目は今回リニューアルされた「おすすめカスタム値」。画質モードのカスタム(1,2)はマニュアルでユーザーが自由に調整できるものだが、ここにもプリセットが用意されている。
選択できるのは、BDシネマ3D/BDシネマPJ/BDシネマPJn/BDシネマFL/BDシネマFLn/BDシネマHMD/放送シネマ/放送アニメとなる。「PJ」はプロジェクター、「FL」は薄型テレビを示し、末尾の「n」はナチュラルの意味で、ディスプレーごとにメリハリ系とナチュラル系の2種を用意している。いち早くHMD(ヘッドマウントディスプレー)用のメニューも用意している点にも注目だ。
つまり、普段はこのカスタム値から適したものを選ぶような使い方がいいだろう。ここぞという時だけ、徹底的に調整を追い込めばいい。これならば手強くて使いこなせないと感じる人でも安心だ。
さらに、メニュー設定でテレビ視聴用の設定とは別に、BD再生用の設定を記憶させることもできる。例えばノイズ抑制を重視したテレビ設定と、解像感重視のBD設定をしておけるのだ。
筆者のような画質追い込み系の人でも、さすがに見る作品ごとに調整しなおすのは面倒だ。映像のクオリティーに大きな差があるテレビ放送とBDで異なる設定値を使い分けられるのも便利だ。
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