標準状態のメモリーでは、デュアルチャンネルが効かないのが惜しいが、より高速性能を望むなら、4GB×2の8GBまでユーザー側で増設するといいだろう。底面のカバーを開ければメモリースロットへのアクセスは容易だ。
なお、試用機にインテル製のターボブースト可視化ガジェット「インテル ターボ・ブースト・テクノロジー・モニター」が入っていたため、いろいろ試してみた。それによると、CPUに負荷をかけ4スレッドを100%使い切ってみると、通常時の2.70GHzではなくブーストされた3.20GHzで動作していた。放熱が効果的でターボ動作がしやすいのだろうか? ファイル読み出しなどを実行したときも、瞬間的にターボ・ブーストが効いて、高速に処理されるのは気持ちのいいものであった。
ただ気になった点もひとつある。HDDの回転によるわずかな振動が、机などに響くことだ。過度に負荷をかけない限り空冷ファンはほとんど回転せず、風切り音も抑えられているのだが、本体を薄くしたのが災いしてか卓面の材質によってはHDD動作時のブーンというかすかな音が聞こえてくる。コストとの兼ね合いだが、モバイル性を重視するならSSD搭載モデルの選択肢があってもよかっただろう。
独自の電源制御機能で
9時間のバッテリー駆動
U36SDのハイスペックは十分に体感できたが、モバイルで重要視されるのは高速性能よりも、やはりバッテリーによる駆動時間だろう。長時間動かすために性能を犠牲にしているモバイル製品が多い中で、U36SDのスペックは前述のとおり高い。それでいて、6セル5800mAhで83Whのリチウムイオン充電池を装備しており、バッテリー駆動時間は驚きの9時間としている。
高性能と長時間を両立させたのが、同社の電源管理機能「Power4Gear Hybrid」だ。よく見かけるプロセッサーやスリープなどの省電力機能の設定だけでなく、搭載ウェブカメラやUSB 3.0ポートへの給電停止も可能となっている。各動作状態における消費電力をフリーソフト「YbInfo」で見ると、以下のようになっていた。
設定状態 | CPU使用率 | 放電速度 | 駆動時間(予想値) |
---|---|---|---|
ハイパフォーマンス | 50%前後 | 36890mW | 約2.09時間 |
バッテリーセーブ(動作時) | 50%前後 | 9998mW | 約7.70時間 |
バッテリーセーブ(待機時) | 1~2% | 7490mW | 約10.28時間 |
テスト時の満容量77000mWhで計算、設計満容量は 81200mWh |
HDDからmp4動画を再生しても、消費電力が10W前後におさまっていることを考えると、バッテリー動作で6~7時間も動画再生を楽しめることになる。
そのほかの特筆すべきユーティリティーとして、「ASUS Fast Boot」がある。これは、スタートアップに登録されたアプリケーションやサービスを、OS起動時にロードせずに、起動後の待機時に徐々に読み込む設定をするものだ。レノボの「Lenovo Enhanced Experience 2.0」ほど高度な機能は持たないので、劇的な効果は期待できないが、「必要に応じてすぐに使いたい」というモバイルニーズに応えられるだろう。
せっかくの高いグラフィック性能を持つ製品なのだから、AVコンテンツを楽しみたいものだが、本体内蔵のステレオスピーカーから出る音は、薄型志向のためか良質とはいえない。その代わりに「ASUS Sonic Focus」というユーティリティーが用意されている。
ボーカルの明瞭度、サラウンド、低音の増減および低音もしくは高音の増強ができるものだ。Sonic Focusを利用することで「何とか聞ける音になる」といった程度の効果しかないものだが、自社製ソフトを採用することでコストを抑えているなら納得だ。
気になるU36SDの実売価格は10万円前後(本稿執筆時)。コンシューマー向けモバイルとして妥当な価格帯に抑えながらも、Core i7-2620Mの採用やGeForce GT520M、750GB HDDの搭載、さらに無駄をそぎ落としたスリムデザインが生む高級感など、なかなかに高評価を与えられる製品である。モバイル向けではあるが、個人が常用するパーソナルノートとして使い込むのもいいだろう。それに十分耐える性能を持っている。
U36SD の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-2620M(2.70GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | GeForce GT 520M |
ディスプレー | 13.3型 1366×768ドット |
ストレージ | HDD 750GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n |
インターフェース | USB 3.0×1 USB 2.0×2、メモリーカードリーダー、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅328×奥行き238×高さ19.5~28mm |
質量 | 約1.6kg |
バッテリー駆動時間 | 最大約9時間 |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 64bit版 |
価格 | 9万9800円 |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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