銀座で買い物をする中国人は
中高年が多い? その理由は……
CNNIC(中国インターネット情報センター)の最新の調査によれば、中国のインターネット利用者は4億5700万人で、都市部に限っていえば家にPCとネット環境を導入するのは、もはや金の問題ではなく「PC・インターネットなる新しいモノを使いたいか否か」という気分的な問題になっている。PCやネットの利用率で言うと30代後半が壁になっている。それは文化大革命など、当時の中国の国情的背景が影響していると言われている。
つまり、掲示板でQ&Aのやりとりをしていたり、ブログで旅行記を書いているのは、受験戦争から解放された大学生以上から30代後半までの、比較的柔軟な人々だ。アキバをはじめとした観光地で見かける中国人は若者ばかりかと思う。
一方で、日本のテレビで紹介された「銀座でバスから降りる中国人観光客」や「炊飯器を喜んで買う中国人観光客」には中高年の比率が高いと思う。中国の中高年はインターネットの利用率が低く、利用していたとしてもまだまだ使い始めたばかり。インターネット利用者の間で共有されている日本旅行の“いろは”は、中高年にはまだまだ伝わっていないのだろう。
30代前半から下の世代は一人っ子であり、それ以上は兄弟がいる。人口比でいえば中高年のほうが一人っ子世代よりまだまだ多い。したがい中国全世代から俯瞰すれば、日本のメディアで報じられている中国人観光客もまた多数派の事実である。
とはいえ、アキバにしろ銀座にしろ、伝統的な考え(悪い言い方をすれば古い考え)を持っている人々ばかりが日本に旅行で訪れる絵は、あと10年もすれば変わる。
かたくなに上の世代がITを拒もうと、10年後にはネット世代の上限も50歳近くまで上がる。観光地で中国人を歓迎する立場をアピールして、中国人スタッフを配備すれば売れる時代は終わるだろう。
既に数十万人もの中国人が首都圏に在住していて、今後も首都圏を中心に増え続けるだろう。チャットソフトの「QQ」や、掲示板、SNSなどのコミュニケーション系のウェブサービスが発展し、より人気になるにつれ、日本の買い物に関する情報もより細分化され、東京における中国人にとっていい店、悪い店の評判のログが積み重なっていことだろう。そして、日本における中国人の買い物スポットはさらに分散していくのではないだろうか。
写真は観光地以外の場所が人気!?
春節では日本のメディアが中国人観光客の消費ばかりに話題を向けたので、今回は買い物の話題をしたが、ネットの日本旅行記では、買い物云々を書いている人は非常に少ない。
観光地では定番の京都や富士山周辺のほかに「三鷹の森 ジブリ美術館」など、アニメ・漫画絡みの場所もアニメ・ゲーム・漫画を小さい頃から見てきた中国人には人気なようだ。
中国人はアキバの写真も撮るが、中央通りを全体図で撮るよりは、建物の壁一面に描かれた巨大なアニメ絵や、ドン・キホーテの写真が多い。ビジュアル的には個性のある建物がウケるらしい。
観光地の写真以上に多いのが、観光地以外の何気ない風景の写真である。路上の風景に「清潔だ」と感じシャッターを押す。どこでも列を作る日本人に「モラルがある」と感動し、彼らを被写体に撮影する。日本人を同じアジア人ゆえに暗に身近に感じ、生活習慣やモラルの大きな違いに驚かされているのだろうか。
中国人にとっては桜こそ日本の代名詞であり、開花のタイミングで日本に旅行したい人がどっと押し寄せる。その時はアキバや銀座以上に、桜のアップの写真や桜と生活臭のある写真がブログでSNSでアップされそうだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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