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Cloudforce 2010 Japan 基調講演レポート

ベニオフCEOの「偽物のクラウド」批判はオラクルも対象に!

2010年10月06日 09時00分更新

文● TECH.ASCII.jp

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10月5日と6日の2日間、セールスフォースは都内のホテルで「Cloudforce 2010 Japan」を開催。基調講演には米salesforce.com会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が登壇し、クラウドと民主化やエコロジーの関係解説、東京に構築するデータセンターの紹介。そして、クラウドには本物と偽物があるとし、オラクルのクラウド製品に対する批判を行なった。

米セールスフォース会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏。元は米オラクルの社員で、セールスフォース創設時にはオラクルCEOのラリー・エリソン氏から出資を受けている

 ベニオフ氏は、数千人が入れるコンベンションホールを埋め尽くす参加者を前に、10年前に来日した際のイベントでは参加者は2名だけで、うち1名は会場で出すサンドイッチが目的だったと明らか、会場を沸かした。

 その上で、同社の10年来のキーワードであるコンピューティングの「民主化」について語った。すなわち、一般に販売されているソフトウェアやハードウェアは、大規模環境向けと小規模向けにわかれており、たとえば中小企業が大規模環境向け製品を導入するのはコスト的に難しい。しかし、セールスフォースはソフトウェアをサービスとして提供しており、スタートアップ企業から小規模企業、中堅企業、そして大企業まで同じクラウドコンピューティングを等しく使えるとする。これが、セールスフォースのいう民主化だ。

コンピューティングとCO2排出量

 続いて、「セールスフォースは、従来型のソフトウェアと比較して90%以上エネルギー消費量が少ない」と、エコロジー面のメリットを紹介した。米ニュークリアス・リサーチ(NUCLEUS RESEARCH)の調査によると、トランザクションあたりのCO2排出量は、自社運用型ソフトウェアでは1.35グラムなのに対し、Googleは0.2グラム、そして、セールスフォースでは0.03グラムに過ぎないという。

原口一博 前総務大臣。安全保障上の問題からデータセンターが国内にあるのは重要なことだと、中国や韓国ではなく、日本でのデータセンター構築を要請していたという

 ほかに、NTTコミュニケーションズと契約し、2011年の稼働を目標に東京にデータセンターを作ることが発表され、また前総務大臣の原口一博衆議院議員と意見交換を行ない、米国にある同社のデータセンターを視察したというエピソードなどが紹介された。そうした中で、ベニオフ氏が力説した話題の1つが、「本物のクラウド」と「偽物のクラウド」だ。

偽物のクラウドへの批判は最近の十八番のようだが、今回の偽物のクラウドにはオラクルのロゴらしきものが・・・

 とあるイベントのブースで「クラウド製品」を見せられたが、それは単なるコンピュータでありクラウドではなかったなど、クラウドブームに乗って自社製品を何でもクラウドと呼ぶ風潮を批判。こうした偽物のクラウドの代表として、オラクルの「Exalogic Elastic Cloud」を俎上に挙げた。

 Exalogic Elastic Cloudは、9月19日に米サンフランシスコで行なわれた「Oracle OpenWorld 2010」のキーノートセッションで、ラリー・エリソンCEOが自ら紹介した「クラウド製品」だ。Xeonプロセッサーを搭載するハードウェアにXenベースの仮想化環境「Oracle VM」を搭載し、その上でOracle Solaris 11やOracle Enterprise Linuxなどの仮想マシンを動作させる、プライベートクラウド構築用の製品だ。この紹介だけに止まれば波風は立たなかったのだが、同氏はこのキーノートで、Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)をクラウドコンピューティングの代表とし、Exalogic Elastic Cloudをそのプライベートクラウド版としただけでなく、セールスフォースはクラウドではないと明言していた。

 ベニオフ氏は、このExalogic Elastic Cloudに対し「コンピュータであってクラウドではない」と反論。100万ドルからという価格も批判し、コンピュータを買えというのは、クラウドではないとしたのだ。

Q&Aセッションに参加した、セールスフォース日本法人の宇陀栄次氏、データセンター構築を担当するNTTコミュニケーションズ副社長の海野忍氏、ベニオフ氏、米セールスフォース共同創業者で副社長のパーカー・ハリス氏

 ベニオフ氏の思いは収まらなかったようで、基調講演終了後のプレス向けQ&Aセッションでも「偽物のクラウド」の問題を取り上げ、オラクルを批判。「クラウドはボックスに入っているものではなく、サービスである」とし、さらに仮想化は素晴らしく、サーバーの効率を上げる効果があるとしつつも、「仮想化はクラウドコンピューティングではない」と説明していた。

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