このページの本文へ

神奈川にある「東京データセンター」オープンも明らかに!

日本企業もソーシャル化を!Cloudforce 2011基調講演

2011年12月15日 07時00分更新

文● 金子拓郎/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 12月14日と15日、セールスフォース・ドットコムはプライベートイベント「Cloudforce 2011 Japan」を開催。初日の基調講演では、米セールスフォース・ドットコムの会長兼CEOマーク・ベニオフ氏が登壇し、「ソーシャルエンタープライズ」を語った。

基調講演に登壇したマーク・ベニオフ氏。日本へのコミットとして、国内のさまざまな企業に投資しているほか、東日本大震災の復興支援として「トモダチ作戦」に参加し、復興作業を行なう人たちにライセンスの無償提供を行なってきたことも明らかにされた

 ソーシャルエンタープライズは、9月に米サンフランシスコで開催された「Dreamforce '11」の基調講演でも紹介された、同社の今年のキーワード。FacebookやTwitterなどの普及で、一般ユーザー同士、社員同士、顧客同氏はソーシャル化、つまりソーシャルネットワークでつながるようになってきた。しかし、企業内部、企業が作り出す製品は、ソーシャル化とは無縁のままになっている。この「顧客・社員」と「企業・製品」の間に生じる格差が、「ソーシャル格差(ソーシャルデバイド)」だ。

顧客と企業の間に生じる亀裂

 そして、ソーシャルデバイスを解消するべくセールスフォースが提供するのが、「ソーシャルエンタープライズ」である。

 基調講演でのベニオフ氏の説明によれば、ソーシャルエンタープライズには3つのステップ、

  1. 顧客のソーシャルプロファイル
  2. 社員のソーシャルネットワーク
  3. 顧客のソーシャルネットワーク(カスタマーソーシャルネットワーク)

がある。

 ソーシャルプロファイルとは、顧客データベースにソーシャルネットワークの要素を加味すること。具体的には、既存の顧客データベースに、FacebookやTwitterから情報を持ってくる機能を加える。

 併設された展示会場の説明員に聞いたところでは、顧客データベースにこれまでと同様の顧客情報を登録すると、FacebookやTwitterからその顧客のアカウントを自動的に探し出し、データベースに追加されるという。これにより、顧客データベース上で顧客のつぶやきを把握でき、より深く顧客を知ることが可能になる。

 ソーシャルプロファイル構築を支援するが、オンラインデータベースサービスである「Database.com」だ。

Dreamforce'11と同様に、特別ゲストとしてニール・ヤング氏が登場。「日本人であることはすばらしい。互いを助ける、すばらしい輪がある」と日本人を励ました

 2つ目の社員のソーシャルネットワークは、社内向けコラボレーションツール「Chatter」などが実現する。Twitterはつぶやき合うことで情報交換できるが、内容は世界にオープンとなってしまう。Chatterであれば、企業内のみでつぶやきを共有できる。企業内のさらに限られたメンバーのみが非公開型のグループも作成可能だ。さらに、他社との共同プロジェクトなどに使える新機能として、非公開型のグループに社外メンバーを招待する機能も登場している。招待されたメンバーは、メールに記載されたURLをクリックすると、グループ内で行なわれた会話や添付された資料にアクセスできる仕組みだ。

 Chatterについては、午後に行なわれたセッション「Social Enterpriseは企業にとってどのような意味があるのか?」にて、ネットイヤーグループ代表取締役社長 兼 CEOの石黒不二代氏らが、そのメリットについて解説していた。Chatterであれば、社員のコミュニケーションの内容を他の社員からも見ることができ、他のプロジェクトの様子がわかるだけでなく、普段あまり会話をしない社員自身も知ることができる。短文はあるが、人なりがわかってくるという。

 また、Chatterによるコミュニケーションは社内の誰にもオープンになることから、議論がうまい人の意見ではなく、第三者が見ても正しいと思われる意見が通ることが多いのだという。

 3つ目のカスタマーソーシャルネットワークは、FacebookやTwitter上でカスタマーサポートが可能になるものだ。たとえば、Twitterで自社製品に関する質問のつぶやきを見つけ出し、サポート担当者に通知する。担当者は、その画面上で解決策を入力すると、つぶやきへの返事としてTwitterに書き込まれるという。

オランダのKLMはカスタマーソーシャルネットワークを活用する企業の1つだ

東京でセールスフォースのデータセンターが稼働

 基調講演では、北米2カ所とシンガポールに続くデータセンターとして、「東京データセンター」の稼働開始も発表された。これはNTTコミュニケーションズが有するデータセンターを利用したもので、CO2の排出量が少ないなど日本でもっとも環境に優しいデータセンターだという。また、このデータセンターについては、セールスフォースの北米データセンターで100%のバックアップを行なうとしている。

 同日行なわれた発表では、東京データセンターはセールスフォースが全世界で適用している仕様で構築されており、日本およびアジア太平洋地域のソーシャルエンタープライズにサービスを提供するとしている。また、NTTコミュニケーションズでは、セールスフォースのサービスをインターネットではなく専用のVPN回線経由で利用可能にする「Salesforce over VPN」の接続先を、海外データセンターだけでなく東京データセンターも加えると発表した。東京データセンターに接続することでレスポンスが向上するほか、東京と海外という国境を越えた冗長化が可能になり、さらに信頼性が高くなるという。

 基調講演後には、同社とは長いつきあいのある民主党衆議院議員で元総務大臣の原口一博氏、NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長の牧 貞夫氏が参加し、稼働開始を祝う樽酒の鏡割りが行なわれた。

「東京データセンター」を祝う樽酒の鏡割り。左から、ベニオフ氏、COOのジョージ・フー氏、原口一博氏、牧貞夫氏、そしてセールスフォース日本法人の宇陀 栄次社長

 なお、東京データセンターではあるが、実際には神奈川に位置する。これは、基調講演にゲスト出演した神奈川県知事の黒岩祐治氏の「東京データセンターといっても神奈川にあるんですが。神奈川データセンターといってほしかった」との発言で明らかに。神奈川県は、住民の声をいつでも直接聞くためのシステムという「e-かなネットアンケートシステム」、行政文書目録管理システムにセールスフォースを利用中。また黒岩知事は、世界中どこにいても自分のカルテにアクセスできる「マイカルテ構想」を神奈川から始めることを目指しており、そのためにもセールスフォースの仕組みは重要だとした。

カテゴリートップへ