7月29日、デルはエンタープライズ向けSSDの最新動向を紹介する「ストレージ勉強会」をプレス向けに開催した。
デルはストレージ事業に真剣に取り組む
説明を行なったデルのグローバルSMB本部 エンタープライズテクノロジストの桂島航氏は、冒頭で自身の経歴について紹介した。同氏は国内大手ITベンダーの研究所でストレージ仮想化などの研究に携わっていたという。そのあとグリッドストレージの製品化企画を担当し、2005年からは米国内の拠点でプロダクトマネージャとして4年半ほど活動し、今年4月に帰国してデルに入社したという。
技術面はもちろん、米国内でのストレージビジネスの実情にも精通した、ストレージの専門家である。その同氏がデルに入社した理由として挙げたのは、デルが「いまストレージ製品事業にもっとも真剣な会社の1つ」だからだという。同氏は、同社の製品ラインナップのコンセプトの変化にも触れ、「以前は標準に則った安価な製品を開発していたが、現在はより競争力のある、ナンバーワンを狙える製品の開発へと方針が切り替わっている」という。同氏のような“専門家”が加わること自体が、同社のストレージ事業への取り組みが“真剣なもの”であることの表われだといえそうだ。
なお、同氏が紹介したガートナーの“マジック・クアドラント”では、デルは2009年の「ミッドレンジ・ディスク・アレイ」市場でリーダーのポジションに位置づけられているという。同じリーダーのポジションでデルより評価が高いのはEMCとNetAppだが、いずれもストレージ専業ベンダーであり、デルのストレージ事業への取り組みの真剣さは米国ではすでに市場でも認知されつつあるのだろう。
SSDが高速HDDを駆逐する
同氏の今回の話はSSDにテーマを絞ったもので、その市場の最新動向の説明だった。SSD(Solid State Drive、半導体ドライブ)は、HDDよりもパフォーマンスや消費電力の点で有利だが、バイト単価が高いのが普及のネックとされている。だが同氏は、評価軸として「価格/IOPS」(毎秒あたりのI/O回数で価格を割った指標)に注目すると、実は現時点でもすでにSSDのほうが優位にあり、IOPSあたりの価格ではSAS(Serial Attached SCSI)HDDのおよそ9分の1となるという。
容量の大きさが求められる用途では「SSDは高い」が、容量ではなくI/Oパフォーマンスが重要な用途であれば、現時点でもSSDのほうがコストパフォーマンスが高いわけだ。こうした分析は、ストレージ関連の非営利業界団体である「SNIA(Storage Networking Industry Association)」でも行なっている。
安価で大容量を実現するSATAに代表されるHDDの用途は継続する一方、SSDは性能重視の領域から徐々に適用範囲を拡大していく。その結果、両者に挟まれた形になる高速型のHDD(現状ではSAS HDDなど)は徐々に市場を失っていくと予測されるという。
SDDの適用範囲の拡大を後押ししているのは、SSDの技術面での改善だ。「ウェアレベリング」「オーバープロビジョニング」「PCIeインターフェイス接続」「並列アクセス」「Auto Tiering」といった要素が次々実用化されることで、SSDの信頼性が高まり、性能向上も果たしている。
なお、SSDにはエンタープライズ向けで利用されるSLC(Single Level Cell)と、コンシューマ機器などで広く利用されるMLC(Multi Level Cell)の2種類がある。同氏によれば、MLC SSDの提供領域が拡大し、容量あたりのコストを引き下げることでさらにSSDの利用拡大につながっていくと見ているという。