12月15日、デルはエバンジェリストである桂島航氏による定例のストレージ勉強会を開催した。SSD、重複排除に続いて、3回目となる今回は「オブジェクトストレージ」がテーマとなっており、同社が10月に発表した「DX6000」の紹介も行なわれた。
スケーラビリティを重視した新しいオブジェクトストレージ
オブジェクトストレージは、デジタルコンテンツの保管に最適な新種のストレージ。ファイルとは異なるオブジェクトという単位でデジタルコンテンツを管理し、優れたスケーラビリティを持つ。こうしたストレージ登場の背景に非構造デジタルコンテンツの爆発的な増大がある。これらのデータは2009年から2020年にかけて44倍に膨張するといわれている一方、90%のデータは作成後アクセスされないという調査もある。「データの性質により、ストレージの性格は変わってくる。アクセスが多く、更新が激しいHotなデータは伝統的なストレージが向いている。しかし、更新があまり行なわれず、アクセスの少ないCoolあるいはColdなデータを扱うには、それ専用のストレージが必要になる」(桂島氏)ということで、PBクラスのスケーラビリティと容易な監理、改ざんを許さないコンプライアンス対応、そしてコストパフォーマンスの高さなどを必要になる。
これを満たすストレージが、オブジェクトストレージだ。10月に発売されたデルのDX6000は、汎用のx86サーバーを用いたオブジェクトストレージ製品で、桂島氏によると以下のような特徴を持っているという。
- フラット・ネームスペース
- 場所に基づいた階層型の名前管理を行なうファイルに対して、オブジェクトに対しては直接IDを付け、フラットなアドレス空間で管理する。物理位置ではなく、IDをベースにしているため、移動が容易なほか、ファイルシステムのサイズやファイル個数の制限も受けない。「ファイルシステムをとっぱらって、オブジェクトを直接取り出す。そして、処理を軽くしてスケーラビリティを高くするのが、オブジェクトストレージのアプローチ。ファイルと異なり、排他制御も行なわない。バケツのように、とにかく放り込んでいく用途に向いている」(桂島氏)という。
- 豊富なメタデータ管理
- データ管理のためのメタデータをオブジェクト単位に付けられる。普通のファイルサーバーに比べて細かい制御が可能。複製や保持などに関するポリシーのほか、カスタムメタデータを付与できる。たとえば、医療分野であれば患者名や患者ID、処置日、担当医、メモなどのデータをオブジェクト単位で付られる。
- RAINアーキテクチャ
- ディスクではなく、ノード単位で冗長化や拡張を行なうRAIN(Redundant Array of Independent Nodes)というアーキテクチャを採用。各ノードを配線し、電源を入れれば自動的にシステムに統合される。
- アーカイブ向けストレージ
- 長期保存を行なうアーカイブ向けの機能。たとえば、データ化けを避けるため、書き込み時にハッシュで検証し、定期的にデータ化けを検出・修復などを行なうデータインテグリティ保証。また、一定時期アクセスがない場合にノードをスピンダウンしたり、消費電力最大値の設定といったパワーマネジメントなどが重要になる。
- HTTPを用いたインターフェイス
- RESTfulなどを用いたHTTPによるストレージのアクセスも重要になっている。「HTTPを使ってストレージにアクセスするのは一昔前は難しかったが、Amazon S3などの登場もあってHTTPでのアクセスが一般的になりつつある」(桂島氏)という状態。デルではHTTPでのアクセスをサポートするほか、上位アプリケーションとの統合を可能にするため、SDKも提供しているという。将来的にはCIFS/NFSのゲートウェイを経由して、クラスタノードにアクセスする形態もサポートされる予定。
- 地理的に離れたクラスタの複製や配信
- 地理的に離れた場所でポリシーベースのレプリケーションを実現する。ポリシーは管理者が自由に定義できるほか、さまざまなレプリケーションや配信トポロジをサポートする。
DX6000では、クラスタサービスノードとストレージノードの2種類で構成され、ストレージノードは1U(4HDD)と2U(12HDD)が選択できる。搭載されているソフトウェアも、オブジェクトストレージの分野において実績を持っており、医療システムやファイル、メール、SharePointなど、幅広いアプリケーションでサポートされているという。
その他、電子カルテや画像など多様な情報を効率的に管理する「臨床医療情報統合」という分野でのアーカイブソリューションとして、デルのDX6000が用いられている事例が紹介された。