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ゼロからはじめるバックアップ入門 第4回

テープだけでも様々な種類が

バックアップに使うメディアはどう選ぶ?

2010年06月17日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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オープン仕様のLTO

 LTO(Linear Tape-Open)は、米HP、米IBM、米シーゲイト・テクノロジーの3社が共同で開発した磁気テープ規格である。LTOの規格には、2分の1インチ(12.65mm)幅のテープを使用した1軸型のUltriumと、8mm幅のテープを使用した2軸型のAccelisがあるが、実際に製品が存在するのはUltriumだけである(写真5)。

写真5 2010年4月頃から出荷が始まった、非圧縮時で容量1.5TBのLTO Ultrium 5メディア(イメーション)

 2000年に発売された第一世代の製品の記録容量は100GBで、現在では記録容量が800GBの第4世代の規格まで発売されている(表2)。どの規格でも、圧縮技術により約2倍の記録が可能である。また、LTO Ultriumのドライブ装置は、2世代前の規格のテープカートリッジを読み出すことができるが、書き出しが可能なのは1世代前のテープまでとなっている。

表2 LTOの規格
規格名記録容量非圧縮時の速度WORM対応
非圧縮圧縮
LTO-1100GB200GB20MB/s不可
LTO-2200GB400GB40MB/s不可
LTO-3400GB800GB80MB/s
LTO-4800GB1600GB120MB/s
LTO-51.5TB3TB120MB/s

 さらに第3世代以降の規格では、WORM(Write Once, Read Many:データの書き込みが一度しかできず、書き込まれたデータの書き換えや削除が不可能だが、読み出しは何回でもできるという機能)に対応している。WORMの制御や規格およびテープIDの識別を行なうため、個々のカートリッジは、LTO-CMと呼ばれる容量4KBのカートリッジメモリチップを内蔵する。

 LTOの起源は、IBMの大型汎用機および旧DECのミニコン用のカートリッジ式磁気テープ(CGMT:CartridGe Magnetic Tape)にまで遡ることができる。IBMやDECのCGMT装置は各社の独自規格として発展し、仕様は閉鎖的だった。これに対してLTOは多数のベンダーが製品を供給できるように、オープンな仕様として策定された。名前に「Open」という単語が含まれるのは、そのためである。

 LTOのこの目論見は的中し、先行したDLT(米クァンタム製品)やAIT(ソニー製品)を超えるシェアを獲得して、エンタープライズ市場向けの高速・大容量テープ製品の代表格となった。

ソニーが開発したAIT/SAIT

 AIT(Advanced Intelligent Tape)は、ソニーが開発した8mm幅の2軸型の磁気テープ規格で、テープに容量2KBのフラッシュメモリを搭載する。このメモリに使用履歴や索引情報を保持することで、バックアップしたデータの高速検索や、検索時のテープ磨耗の軽減を図っている。

 もう1つのSAIT(Super AIT)は、2分の1インチ幅のテープを使用した1軸型の規格だ。テープへの記録や圧縮など論理的なの面ではAITの技術を継承しているが、テープカートリッジの外形など物理的な面ではまったく異なる技術となったため、互換性はない(写真6)。

写真6 ソニーのAITカートリッジ(左)とSAITカートリッジ。左右幅はほぼ同じだが、天地サイズはSAITが約2倍となる

 1996年に発売されたAITの第一世代の製品の記録容量は25GBで、現在では記録容量が400GBの第5世代のAIT規格、および記録容量が800GBの第二世代のSAIT規格まで発売されている(表3)。AIT/SAITでは圧縮技術により最大2.6倍の記録が可能である。さらに第2世代以降のAITとSAITで、WORMにも対応している。

表3 AIT/SAITの規格
規格名記録容量非圧縮時の速度WORM対応
非圧縮圧縮
AIT-125/35/40GB65/91/104GB3/4/6MB/s不可
AIT-250/80GB130/208GB6/12MB/s
AIT-3100/150GB260/390GB12/18MB/s
AIT-4200GB520GB24MB/s
AIT-5400GB1040GB24MB/s
SAIT-1500GB1300GB30MB/s
SAIT-2800GB2080GB45MB/s

(次ページ、「バックアップに利用できる光学メディア」に続く)


 

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