バックアップに利用できる光学メディア
光学メディアの種類は多数あるが、バックアップ用にはCD-R、DVD(DVD-R)、Blu-ray(BD-R/BD-RE)が使われている。
CD-R
CD-R(Compact Disc Recordable)は、1996年に太陽誘電が開発した「データを書き込むことが可能なコンパクトディスク(CD)」である。一度書き込まれたデータは書き換えや削除が不可能だが、容量の限度まで追記が可能なWORM型メディアである。ディスクの直径は12cmと8cmの2種類があり、最大記録容量は12cmディスクで700MB、8cmディスクで210MBである。
類似の規格に、全体を消去すれば何度でも書き込みが可能なCD-RWがあるが、CD-Rメディアのほうが圧倒的に安く、光学メディアは半永久保存用に使われることが多いため、バックアップ用途に限ればCD-RのシェアはCD-RWを圧倒している。
DVD(DVD-R)
DVD(Digital Versatile Disc)は、1996年に日米欧の多数のメーカーやコンテンツ配信会社が共同で開発した光ディスク規格だ。CDと同じくディスクの直径は12cmと8cmの2種類がある。CDと違って両面に記録することが可能で、さらに片面ごとに記録層を二層構造で持つこともできるなど大容量化に対応している。最大記録容量は、両面二層の12cmディスクで17.08GB、両面二層の8cmディスクで5.2GBである。
DVDは音楽や映像、コンピュータデータなど多様なコンテンツを格納する目的で利用される。当初の規格が制定されたあとにも、家電メーカーや映像系コンテンツ作成会社のニーズによって、多くの派生規格が生まれた。このうち、データの書き込みに対応した規格は、DVD-RとDVD-RW、DVD-RAM、DVD+R、DVD+RWの5種類がある。
DVD-RとDVD+RがWORM型のメディアで、そのほかは削除や再フォーマット処理により繰り返し書き込みが可能なメディアである。バックアップ用にはメディアの単価が安いDVD-R(DVD Recordable Disc)とDVD+R(DVD plus R)が普及している。日本国内ではDVD-Rが優勢だが、欧米ではDVD+Rのシェアが高い。
Blu-ray(BD-R/BD-RE)
Blu-rayは、2002年に日立製作所、韓国LG電子、松下電器産業(現パナソニック)、パイオニア、蘭フィリップス、韓国サムスン電子、シャープ、ソニー、仏トムソンの9社が共同で開発した光ディスク規格である。CD/DVDと同じくディスクの直径は12cmと8cmの2種類があり、CDと同じく片面のみを使用する。一方で、記録層を複数持つことができるという点ではDVDと似ている。記録容量は一層あたり12cmディスクで25GB、8cmディスクで7.5GBだ。試作レベルでは、8層構造の記録容量200GBのメディアまで製造に成功している。
データ書き込みに対応した規格は、WORM型のBD-R(Blu-ray Disc Recordable)と、書き換え可能なBD-RE(Blu-ray Disc Rewritable)の2種類がある。それぞれで、記録層を二層化した記録容量50GBのメディアが発売されている。
バックアップ媒体としてのHDD
大容量化したHDDをバックアップするため、別の大容量のHDDを利用することが一般的になってきた。HDDを利用したバックアップメディアとしては、おもに個人やSOHO向けの外付けHDDおよびリムーバブルHDDと、エンタープライズ向けのストレージ装置とがある。このうち、ストレージ装置については次回で取り上げる。
外付けHDDは、USB2.0やIEEE1394、SCSIなどのインターフェイスによりコンピュータと接続するHDDだ。コンピュータに内蔵されたHDDや別の外付けHDDのバックアップメディアとしても利用される。最近では、複数のHDDを搭載して大容量化したものも増えている。
一方リムーバブル(脱着可能な)HDDは、磁気テープカートリッジの磁気テープを、HDDに置き換えたようなメディアだ。リムーバブルHDDのカートリッジは、LTOなど2分の1インチ幅のテープカートリッジとほぼ同じ大きさだ。大量に保管する場合でも場所をとらないという点が、外付けHDDに対する優位点である。また、電源やインターフェイスケーブルの抜き差しなども不要で取扱が容易という点も、外付けHDDに対する優位点である。
かつてはJAZドライブなど数百MBから数GB級の製品が存在したが、最近では数百GB級のRDXが主流となっている(写真5)。RDXのカートリッジは、衝撃吸収材で保護された2.5型HDDを内蔵し、1mの高さから落下しても壊れにくい高耐久性を実現している。記録容量はカートリッジあたり160GB~750GBで、実勢価格は500GBカートリッジで6万円程度である。
(次ページ、「メディアごとの得意分野・不得意分野」に続く)
この連載の記事
-
最終回
データセンター
バックアップを賢く行なうための設定チェック -
第11回
データセンター
シンプルなバックアップを試してみる -
第10回
データセンター
ホストから始まったバックアップの歴史を振り返る -
第9回
データセンター
サーバー仮想化環境では、どうバックアップする? -
第8回
データセンター
データを長期間安全に保護するアーカイブとは? -
第7回
データセンター
災害対策のためのバックアップを知ろう -
第6回
データセンター
ディスクバックアップを支える新しい技術とは? -
第5回
データセンター
バックアップメディアはテープからHDDへ -
第3回
データセンター
フルバックアップと増分バックアップは何が違う? -
第2回
サーバー・ストレージ
バックアップをするには何が必要なの? - この連載の一覧へ