EMCの「Symmetrix V-Max」は、あらゆる点で旧来のストレージを凌駕する、まさにハイエンドに値するスペックを持つストレージだ。ここでは米EMCのエンタープライズCTOであるケン・シュタインハート氏のインタビューを基に、V-Maxの技術や最新動向を紹介する。
コンポーネントを減らすと
品質は上がる
Symmetrix V-Maxは、既存のスケールアウト型ストレージへの回答として、2009年に市場投入されたハイエンドストレージである。マルチコアCPUと大容量メモリを搭載した「V-Maxエンジン」を相互に接続することで、容量とパフォーマンスをリニアに拡張することが可能になった。また、搭載される「Enginuity」というソフトウェアには、物理容量以上のボリュームをサーバーに見せかけるバーチャルプロビジョニング(シンプロビジョニング)やストレージの階層化などの最新の機能もふんだん盛り込まれている。
Symmetrix V-Maxは既存のSymmetrixから大きなアーキテクチャの変更を行なっている。「従来はサーバー側とやりとりするフロントエンド、データを格納するストレージ側のインターフェイス、キャッシュメモリという3つのコンポーネントが独立で存在していた。また、多くのストレージはバックプレーンに制限を受けている。しかし、Symmetrix V-MaxではこれらをV-Maxエンジンに統合し、それらをメッシュ状につなぐことでスケールアウトを実現する」(シュタインハート氏 )というコンセプトがあったという。
こうした大きなアーキテクチャの変更であったため、製品リリースのかなり以前からベータテストを行なっていたが、Symmetrix V-Maxは早期に品質テストをクリアしたという。さらに早期導入プログラムにより、複数の顧客には本番システムでも導入したが、ここでもまったく問題なかった。結果として、2008年の時点ではすでに65システムが実稼働している状態で、「発表の時にはすでに実績を積んで、確実に問題のない製品をリリースできた。コンポーネントを減らすと品質が上がるということが実証できたと思う」(シュタインハート氏)と高いレベルでの製品出荷にこぎ着けた。
ストレージ階層化を「使える」ようにしたFAST
Symmetrix V-Maxのメリットとして、まずはコンソリデーション(集約)能力の高さが挙げられる。シュタインハート氏は「今まで3~5台必要だったストレージを1台のV-Maxに統合できる。この結果、コストや設置面積、電力、冷却、ソフトウェアなどを削減することが可能だ」と能力の高さをアピールする。
また、ストレージの階層化も導入を促進させる大きな理由だ。特にEMCの場合、データのI/Oから利用頻度を検知し、データを自動的に仕分けるFAST(Fully Automated Storage Tiering)のメリットが絶大である。多くのアプリケーションでは特定の箇所でI/Oが集中するので、FASTではこれらの挙動を自動的に検知し、たとえば利用頻度の高いデータをフラッシュドライブへ、低いデータを安価なSATAドライブへと配置することが可能になる。
シュタインハート氏は「ストレージ階層化の概念は以前からあったが、やはり情報の仕分けに人手をとられるため、移行はなかなか進まなかった。しかし、FASTのような技術の投入で、敷居の高い導入の問題がクリアになった」ということで、FASTがストレージ階層化を現実的に使えるようにしたと語る。FASTはウィザードで設定できるほか、検知した結果を確認しながら設定を逐一進めていくマニュアルモードも用意している。
さらにオートプロビジョニングの機能により、ストレージの割り当てを自動化することも可能だ。仮想化と自動化を組みあわせて、ストレージの利用効率を飛躍的に高めることができるという。
Symmetrix V-Maxは昨年発表されたばかりだが、「今までのストレージの歴史のなかでもないくらい、信じられない速度で、導入が加速している。米国ではすでに大多数のSymmetrixがV-Maxに移行している」(シュタインハート氏)とのことで、すでに1000台以上のSymmetrix V-Maxが導入されているという。
(次ページ、最新版ではバーチャルプロビジョニングを強化)

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