ネクサン テクノロジーズ インク(以下、ネクサン)は、RAID対応のディスクアレイ装置を開発・販売するストレージベンダーである。日本では比較的最近聞くようになった名前だが、実はすでに10年の歴史を持つ。高速・信頼性の高い中小企業向けの製品を提供する同社の強みは、自社製シャーシにあるようだ。
ATA HDD搭載のディスクアレイ装置を
いち早く投入
1999年にイギリスで設立されたネクサンは、もともと磁気テープの代替としてHDDを使うD2D(Disk To Disk)向けのATA対応ディスクアレイ装置を作るベンダーとして登場した。そして、2004年にはいち早く高密度ストレージとして、4Uラックマウント筐体で最大42台のATA HDDを搭載するディスクアレイ装置を世界で初めて出荷。その後高速なSAS対応HDD搭載モデルも投入した。
ネクサン 日本オフィス カントリーマネージャーの秋山将人氏は、「ディスクアレイ装置はハードウェアレベルの信頼性やクオリティが重要です。この規模のベンチャーでは工場を持たないファブレスが普通ですが、弊社は最終アセンブリを自社でやっています」と開発体制のクオリティの高さをアピールする。
現在、同社はSATA HDDモデルの「SATABoy」「SATABeast」、SAS HDDモデルの「SASBoy」「SASBeast」という4つのディスクアレイ装置が用意している。大きく分けるとコストパフォーマンスの高い「Boy系」と、高集積密度・高信頼を旨とする「Beast系」に分けられるわけだ。
SATABoy、SASBoyは3U筐体を採用し、計14本のHDDを搭載可能。これに対して、SATABeast、SASBeastは4U筐体を採用し、計42台のHDDを搭載可能になっている。両者ともコントローラの冗長化に対応し、インターフェイスは4GbpsのFCポート×2、1GbpsのiSCSIポート×2を搭載。容量やパフォーマンス、コストなどの要件を基に製品を選択できる。
特に「新宿の目」のモニュメントのような浮き彫りを前面に配したSATABeast/SASBeastの筐体は、個性豊かなゲーミングPCを思わせるユニークなものだ。
これらはコントローラあたり最大2GBのメモリを持ち、基本的にハードウェアでRAID処理を行なうため、高いパフォーマンスが実現されている。ローエンドのSATABoyでもRAID5で冗長化コントローラを使った場合、リードで626MB/s、ライトで482MB/s。RAIDエンジンを2つ搭載するハイエンドのSASBeastを同条件で計測した場合は、リード1080MB/s、ライト626MB/sという数字をたたき出す。
HDDを背中合わせにしてなにができる?
さて、ここまで聞いた段階では、多少名前の変わったRAIDストレージ程度のイメージしか沸かないだろう。しかし、ネクサンのストレージはかなりユニークな特徴を持ち合わせている。
SATABeast/SASBeastでは特許取得済みの「アンチバイブレーションデザイン」の採用により、HDD障害の原因となる振動を減らすことに成功している。具体的には、同じディスクドライブを背面ずつ背中合わせにペアで搭載する。こうすると両者のディスクドライブの回転がそれぞれ逆方向になるため、ディスクドライブ同士が回転振動を打ち消しあうことになるという。これにより振動を減らし、故障率低減と可用性の向上に貢献するのだ。
冷却も工夫されている。まずディスクドライブは水平ではなく、縦に搭載され、ペアごとに適度なすき間が設けられている。筐体前面には巨大な3つのファンが搭載されているので、そこから前面吸気し、前述したすき間を抜け、背面のファンから排気される。背面にある補助クーリングモジュールと電源ユニット搭載のファンも含め、筐体全体で11個のファンが装備されており、エアフローが最適化されている。最近のデータセンターで導入されているキャッピングの技術が、4Uラックマウントの筐体内で行なわれているようなイメージだ。
秋山氏は「多くのストレージベンダーでは壊れたHDDを回収して、メーカーさんに戻すのですが、このリターン率が他のベンダーに比べて半分くらいになっています。リターン率の少なさがHDDの故障率と直結するわけではないですが、私たちくらいのベンチャーではかなり優秀だと思います」と控えめながらアンチバイブレーションシステムや冷却システムの効果について語る。
(次ページ、「消費電力低減の鍵はシャーシ設計にあり」の続き)
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