日本IBMがビジネスや社会を効率化するためのコンセプトである「Smarter Planet」を発表してから1年が経過した。
「当初は、スマートというと、日本では『痩せている』という意味が強く、なかなか理解されなかったが、1年を経過して、賢く、効率化を図るという意味が浸透してきた」と、日本IBMの橋本孝之社長は語る。
だが、Smarter Planetのコンセプト自体、かつてIBMが提唱したe-Businessほど浸透しているとはいえない状況にある。
ITが作る、賢い惑星=Smarter Planet
では、Smarter Planetとはなにか。ここでもう一度捉えなおしてみたい。
IBMが提唱したSmarter Planetは、世界中にあるたくさんの無駄や、非効率なものを解決していくという考え方だ。その課題解決にITや先進技術、ソリューションを活用。デジタルインフラと物理インフラの融合が、課題を解決し、「スマートなプラネット」、いわば「賢い惑星」になることで、より良い世界に変化させるものだ。
わかりやすい事例のひとつに、交通渋滞の解決がある。年末年始の交通渋滞に閉口した読者もいるだろうが、日本における渋滞の影響を数字に置き換えてみると、年間で38億時間もの時間が消費されており、1人あたりに換算して年間30時間もの時間が渋滞によって無駄にされているという。38億時間をコストに換算すると、なんと12兆円もの損失規模となり、実に、GDPの2%相当にあたる費用が無駄になっている計算になるという。
交通渋滞は日本のみならず、先進国、新興国でも大きな問題となっている。
米国でも同様で、ニューヨークだけでも年間4000億円もの経済コストの損失になっているというし、OECD諸国における自動車の所有率が75~90%に対して、新興国ではまだ所有率が低く、自動車所有率は10人に1人という状況が、今後3人に1人以上になると、交通インフラには極めて大きな負荷がかかることが予想されている。
Smarter Planetは、交通渋滞解決のためにITや先端技術を活用するという提案だ。
この連載の記事
-
第35回
ビジネス
首位を狙わないキヤノンのミラーレス戦略 -
第34回
ビジネス
NEC PCとレノボの合弁はなぜ成功したのか? -
第33回
ビジネス
シャープ復活の狼煙、その切り札となるIGZO技術とは? -
第33回
ビジネス
任天堂はゲーム人口拡大の主役に返り咲けるのか? -
第32回
ビジネス
日本IBMの突然の社長交代にみる真の狙いとは? -
第31回
ビジネス
脱ガラパゴス? 国内TOPのシャープが目指す世界戦略 -
第30回
ビジネス
これまでの常識が通じないAndroid時代のインフラ開発 -
第29回
ビジネス
ビッグデータは我々になにをもたらすのか? -
第28回
ビジネス
Macの修理を支える、老舗保守ベンダーが持つ“2つの強み” -
第27回
ビジネス
スマホ時代に真価を発揮する、多層基板技術ALIVHとは? -
第26回
ビジネス
富士通が「出雲モデル」「伊達モデル」を打ち出したこだわりとは - この連載の一覧へ