健康インターネット、都市の渇きを癒す……
このなかで、IBMは、この5年間で都市がどんな形で進化すると見ているのだろうか。
「より健康的な免疫機構を持つ都市」では、疾病が、いつ、どこで、どのように拡大するかを、公衆衛生当局が正確に把握し、次にどの地区で感染が広まるかを予測。感染を検知、追跡して、拡大に備え、予防するためのツールを配布するとともに、電子カルテ情報を匿名の医療情報として、安全に共有し、人々の健康を維持する「健康インターネット」が登場するとする。
また、「生命体のように感知し、反応する建物」では、ビル内部の何1000ものセンサーが、人の動きやビル内の温度、湿度、居住率、光などを監視。これまで独立管理されていた暖房、水道、下水、電気などを一元的に管理することで、資源の節約と二酸化炭素排出量の削減、あるいは問題が発生する前に事前に修理できるようになるといった運用が可能になるという。これにより、居住者や利用者の居心地や安全性の向上などが図ることができるという。
「燃料がいらない自動車やバス」では、1回の充電で480~800kmの走行が可能な電気自動車が登場し、公共の場所での充電も可能になるという。ここで使う電力も風力をはじめとする再生可能エネルギーに変わり、石炭による発電への依存が無くなり、CO2排出量の削減や騒音公害も少なくなるとする。この制御にもITインフラが強く関わることになる。スマートグリッドとの連動も視野に入れた取り組みともいえ、米国では、移動先の別の州で充電しても、課金は自分が住む州で行われ、電力もそこから供給されるという仕組みも可能になるという。
また、「都市の渇きを癒やし省エネを実現する、よりスマートなシステム」では、先端技術を活用したスマートな給水システムを導入することで、水の無駄遣いを削減。河川や湖への汚水流入を防ぐだけでなく、水を浄化して飲用可能な下水システムを導入。先進的な浄水テクノロジーによって、都市はその地域ごとに水のリサイクルと再利用ができるようになり、水輸送エネルギーが最大20%削減できるようなるという。
5つめの「緊急通報が入る前に危機に対応できる都市」では、すでに実績があがっており、ニューヨーク市の消防局と共同で、リアルタイムでデータを収集、共有することで、火災を予防するとともに救助隊を守る最先端のシステムを構築したほか、ニューヨーク市警では、犯罪と犯罪者に関する詳細な情報を収集および分析する犯罪情報ウェアハウスを構築し、膨大なデータから犯罪傾向や犯人増を素早く割り出すことで治安維持に役立てているという。また、IBMは都市を壊滅的な洪水から守るスマートな堤防システムについても設計を進めているという。
このようにIBMが提唱するSmarter Planetは、ITシステムそのものの変革という考え方に留まらず、社会の課題を解決し、無駄や非効率化を削減することで、複数の業種や領域にまたがる成果を高めるほか、ひいては社会全体の効率化を図ろうというものだ。
2010年は、Smarter Planetにおける、より具体的な成果も出てくることになろう。経済低迷の影響で、IT投資予算の削減を進める企業が多く、日本の政府も、スーパーコンピュータの予算削減に一時傾くなど、IT投資に慎重な姿勢を見せているが、Smarter Planetの視点からITの活用を捉えると、いまIT投資を削減している場合ではないことがわかる。
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