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矮小化された「グリーンIT」論への警鐘

スマートグリッド入門 ~賢い電線が注目されるわけ

2009年12月17日 09時00分更新

文● 松本淳

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最近注目を集めつつある「スマートグリッド」とは何か。「ITの技術を使って電力エネルギーのネットワークを効率的に運用する」ものとされているが、それだけにとどまらず、応用範囲は多岐にわたるという。新書の著者にその意義を聞いた。

今回は『スマートグリッド入門』(アスキー新書、780円)

 デンマークで“COP15”(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)が開催され、鳩山政権の“温室効果ガス25%削減目標”が大きな議論を呼んでいる。

 環境への意識が高まる中、賢い送電網「スマートグリッド」への注目も高まってきた。CO2を多く排出する化石燃料による発電から、再生可能なエネルギーへの移行が急務になっているが、太陽光や風力などによる電力供給は、天候に左右されやすく安定供給が難しい。IT技術を活用した送電網「スマートグリッド」が整備されれば、この課題の解決に近づくだけでなく、そこには大きなビジネスチャンスや経済復興のヒントも眠っている。

 スマートグリッドとは何か、どのような可能性があるのか。

 発売されたばかりの新書「スマートグリッド入門 次世代エネルギービジネス」の著者、福井エドワード氏はこれまでの「グリーンIT」にはどこか矮小化されている部分があったと話す。スマートグリッドのアプリケーションを開発していくことが、グリーンITの本命ではないかと言うのだ。執筆のきっかけにはこういった環境・エネルギーとITとのかかわりに関して問題意識を喚起したいという思いがあったという。ここでは、新書の内容に触れながら、スマートグリッドが注目される理由を聞いていこう。


賢い送電線がもたらすメリットとは?

福井エドワード氏。

―― まずはスマートグリッドの概念についてご説明いただければと考えています。ITの世界では分散処理を実現する“グリッドコンピューティング”という技術がありますが、そういったイメージも含めた用語と言えるのでしょうか?

 「情報技術を使って、送電線をインテリジェント化する、という説明がよくなされますが、私はそこから一歩推し進めて、それが融合したものと解釈するべきだと考えています。これまで供給サイドであった電力会社と、同じくこれまでは需要サイドにあった家庭や工場などを電力網だけでなくIT通信網で結び、エンド・ツー・エンドでのコミュニケーションが取れるような仕組みを指します。コミュニケーションですから、一方通行ではなく双方向で情報をやり取りし、電力の需給バランスを最適化するわけです」

―― 例えば、需要以上に電力を作り出して生まれていたロスを減らしたり、あるいは需要を常に満たせるか不安もあった自然エネルギーの活用をより積極的に図るということでしょうか。

福井 「もちろん、マクロの視点ではその通りです。ミクロの視点で見ても、例えば家庭では省エネ、節約というメリットもあります。スマートメーターと呼ばれる次世代型の電力コントロール機器が家庭に普及しつつありますが、これによって2つの利点が生まれてきます。ひとつは情報化された電化製品、例えば冷蔵庫やエアコンなどをメーター側からコントロールし、無駄な電力を使わないようにすれば、節約・省エネといった直接的な効果につながります。

スマートグリッドのイメージ(出典:経済産業省「低炭素電力供給システムの構築に向けて 低炭素電力供給システムに関する研究会報告書」)

 もうひとつは、いわゆる“売電”です。屋根につけた太陽光発電機の電力を家庭で消費するだけでなく、余った分を電力会社に売れるのです。それを制御するのもスマートメーターです。グーグルが“Google PowerMeter”というサービスを発表したのも記憶に新しいところですね。言うまでもなく個々の家庭が自然エネルギー発電を始めることで、大型発電所でのCO2排出量を減らせるわけです」

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