11月29日、日本IBMはグローバル共通の基盤を用いたクラウドサービスを発表した。アプリケーション開発やテスト、デスクトップ配信などサービスのほか、開発やテストを支援するサービスも提供する。
グローバル仕様のクラウドを日本でも構築
今回の発表は、グローバル共通のITインフラを千葉県幕張の国内データセンターに構築し、パブリッククラウドとして提供していくというもの。具体的には、「IBM Smart Business 開発&テスト・クラウド・サービス」「IBM Smart Business デスクトップ・クラウド・サービス」というクラウドサービスとして、国内では2011年3月から開始される。これに付随して、「IBMクラウド・アプリケーション開発サービス」「IBMクラウド・テスト・サービス」というプロフェッショナルサービスも用意される。
冒頭、クラウドコンピューティングへの取り組みを説明した日本IBM 代表取締役社長の橋本孝之氏は、企業システムを従来型のシステム、プライベートクラウド、パブリッククラウドの3つに分類。IBMでは「アプリケーションや用途に応じて最適なプラットフォームを利用していただけるように提供できるようになった」と説明。長年「仮想化」「標準化」「自動化」を軸に、さまざまなテクノロジーを集約しているとアピールした。また、「クラウドビジネスに関しては「3カ月単位で売上が倍増している状態。クラウドはかけ声ではなく、リアルビジネスになっている」で好調に推移しているという。
続けてサービスの詳細を紹介した執行役員 吉崎敏文氏は、今回のサービスの3つの特徴を紹介した。1つ目はIBMの技術が集大成されていること。1970年代から取り組んでいる仮想化技術を軸に、2000年代からクラウド関連の製品を次々と投入。こうした「長年培ってきたテクノロジーやアセットを結集した発表」(吉崎氏)ということで、IBM自体が蓄積した技術を統合したサービスであることが強調された。
2つ目はグローバル規模で提供され、データセンターを選択できる点。2010年5月から開始した米国のラーレイのメインセンターからサービスをスタートし、2010年8月にはドイツのエーニンゲンをオープン。すでに北米・欧州など27カ国で展開しているという。「グローバル規模でオペレーションが統合されており、ほとんど人手をかけずに、サービスを開始している」(吉崎氏)とのことで、世界中で統合化されているのも大きな売りだ。
3つ目は世界最高レベルのセキュリティだ。民間セキュリティ研究開発組織であるIBM X-Forceの調査をベースにした高度なセキュリティ対策はもちろん、TivoliのID管理、IBMのセキュリティフレームワークに基づく管理などを実現している。
アプリケーション開発とデスクトップ配信のクラウドを用意
具体的なサービスは以下のとおり。
- IBM Smart Business 開発&テスト・クラウド・サービス
- アプリケーションの開発・テスト環境を提供するパブリッククラウドサービス。開発ツール「Rational」、Webアプリケーション基盤「WebSphere」、データベース管理ソフト「DB2」などのミドルウェアをひな形として提供していく。価格はWindows Serverを含む価格で、1時間10円となっている。
- IBM Smart Businessデスクトップ・クラウド・サービス>
- PCのデスクトップ環境をネットワーク経由で提供するシンクライアントサービス。VDIの技術としては、シトリックスの「XenDesktop HDX」を採用する。国内だけではなく、米国や欧州などでも利用可能になっている。価格は5年契約で2960円/月となっている。
- IBMクラウド・アプリケーション開発サービス
- クラウドコンピューティングを活用したアプリケーションの設計・開発やSaaSの提供を行なう企業に対する支援を提供するサービス。ビジネス上の要件分析、アーキテクチャ設計、ロードマップ作成など計画から開発まで幅広く支援する。料金は個別見積もりとなる。
- IBMクラウド・テスト・サービス
- 物理的なテスト環境をクラウド上のソフトウェア環境上にシミュレーションすることで、ユーザー側でのテストを実現する。パフォーマンステストを支援するサービスも用意するという。2011年第2四半期からサービス開始予定。
今回、アプリケーション開発とデスクトップという2つのサービスが選ばれたのは、やはりニーズが高かったからだという。プライベートクラウドを先行して拡充してきた同社だが、これを期にパブリッククラウドのメニューも増やしていくとのこと。