一般的に語られるようになったアダルトビデオ
今年8月、重慶でアダルトビデオの動画ファイルを販売した30歳の男性「揚氏(仮名)」が逮捕された。彼は販売業者ではなく、ただのコレクターだった。彼の動画ファイルが多数詰まったHDDの残り容量がゼロになりそうだったが、いらない動画ファイルを捨てるのを惜しみ、154タイトル、20GBのデータを個人売買で売ろうとしたところ、囮(おとり)の警察に御用となった。ポルノ商品販売の罪で3年の有罪判決となった。
揚氏は特別なコレクターではない。自己紹介代わりに毎日の生活習慣、毎日のスケジュールをしたためた投稿の多くに、「出社前ないしは登校前にP2Pソフトを立ち上げ、アダルトビデオの動画ファイルをダウンロードするように設定し、家に帰ったらダウンロードが完了した動画を楽しむ」という内容が書かれている。
しかも男性だけでなく、「アダルトビデオをダウンロードして、家に帰ったら見るのが習慣」と堂々と明言する女性ブロガーもいる(しかもブログの自己紹介の写真には自分の写真を堂々と載せている)。大学生は別の地域出身だと大学の宿舎で寝泊まりするが、女子大生も宿舎でルームメイトとアダルトビデオを鑑賞するという話はごく普通にある。
また、ここ数年ネット上で流行しているネット小説の中でも、大学生や社会人の主人公が家に帰ってアダルトビデオを見る、という様子が描かれた文章がいくつも登場している。今や10代どころかネット世代にとってアダルトビデオを語ることは恥ずかしくないことなのだろう。実際筆者が知人の中国人に聞いても、さほど恥かしいそぶりは見せなかった。
中国で人気のP2Pソフト、換言すればアダルトビデオをダウンロードできることで知られる定番のP2Pソフトがいくつかあるが、これを力ずくで一斉粛正したり、P2P上のアダルトビデオを狙い撃ちにした法整備は未だ聞かない。検索すれば簡単にわかる情報だが、取り締まれない理由があるのかもしれない。
ところでシーゲイトの前CEO、ビル・ワトキンス(Bill Watkins)氏は、CNNのインタビューに「シーゲイトはポルノ動画の視聴を手助けしているんだ(We're building a product that helps people buy more crap - and watch porn. )」という正直すぎる発言をした。その発言は海を越え、中国でもニュースとなり、中国の多くのアダルトビデオコレクターにその発言は支持されている。
ここ1,2年で、今までパソコンに消極的だった中国の中高年世代が、今までその子供が独占していた一家に一台のパソコンに触れつつある。それに比例してブログや掲示板で「親にAV見られてしまった。どうしよう……」なんて書き込みを見るようになった。
また比例して、最近モニター一体型のコンパクトでスリムなデスクトップパソコンが中国メーカーからリリースされ、IT系メディアは「寝室に一台」と一体型パソコンをアピールする記事が急増した。さすがに寝室向けの一体型パソコンと、中高年パソコンユーザーと、ブロードバンド人口の急増をリンクするのはこじつけかもしれないが、どうだろう。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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