日本のAVがなかったら中国の性教育はない?
グーグルニュースで「アダルトビデオ」という単語が出るニュースの頻度をチェックしてみると、日本のアダルトビデオに関するニュースよりも、「A片」をキーワードにした中国のアダルトビデオに関するニュースのほうが多い(しかも日本の検索結果は、その中の多くが「AudioVisual」の話題が含まれている)。
中国ではポルノは御法度だ。今年に入って中国では動画サイト、漫画、オンラインゲームのコンテンツの規制条例が次々に発表され、また次々とサイトが粛正された。
NGと判断する基準のひとつに「ポルノ情報を含むか否か」がある。6月に話題となったフィルタリングソフト「グリーンダム」もまた、パソコン端末側でポルノ画像を遮断することを目的のひとつとして、中国政府は積極的に導入を推進した。このようにポルノは御法度であり、アダルトビデオもまた御法度なはずなのだが、アダルトビデオについてのニュースが日本より多い頻度でどこかのメディアから報じられているのは興味深い。
中国でアダルトビデオ女優名で検索してみると、「アダルトビデオ女優XXの画像を使った巨大ポスターが街中に出現! ちなみにこのアダルトビデオ女優XXの経歴は……」「日本のあのアダルトビデオ女優が中国に来ている!」といったニュース記事や、「人気アダルトビデオ女優の単語を入れたらアクセス数急増!SEOに結構いいかも!!」といったブログ記事など、たくさんの検索結果が出る。
また画像検索をかけると、服を着たその女優の写真もまたいくつも出てくる。つまり中国当局の方針としては、アダルトビデオ女優の存在をないことにしよう、というわけではないようだ。中国発のアダルトビデオに関するニュースの中には「アダルトビデオの是非-アダルトビデオは有害なのか」「日本のアダルトビデオがなかったら中国の性教育はないに等しい」といった、「アダルトビデオは駄目と言っても、みんな見ているし、それが結果的によい影響を与えている一面もある」という内容のニュースもある。
以前、河南省南陽市で、新婚夫婦の家にネットを担当する警察が家宅捜索にやってきて、アダルトビデオを見たとして、おそらく月収1ヵ月半ほどであろう1900元(約2万6000円)の罰金を命じたというニュースがあった。
処罰された理由としては、ネットに関する条例「計算機信息網絡国際聯網安全保護管理方法」の中の「ポルノのコピー、閲覧、伝播の禁止」にひっかかったからだろう(海賊版利用というところでひっかかっているわけではない)。このニュースに多くのネットユーザーが「誰もがネットでP2Pソフトでダウンロードしているのに」「自分が捕まったら破産してしまう」と同情している。
南方都市報は同記事読者に対して3つの質問を行なった。「あなたのパソコンにはアダルトビデオの動画ファイルがあるか?」の質問に73%が「有る」と回答。「アダルトビデオの動画ファイルのダウンロードは処罰すべきか」の質問に68.2%が「すべきでない」、18.2%が「わからない」、13.6%が「すべき」と回答した。
また「家にアダルトビデオを所持することを法律で規制すべきか」という質問には、45.5%が「すべきでない」、同数で「わからない」、9%が「すべき」と回答した。このことからも「家でアダルトビデオを視ることくらい放っておいて欲しい」というのが多数派意見のようだ。
イマドキの中国人のアダルトビデオ入手方法は、店頭販売ではなくパソコンでダウンロード、それもP2Pソフトでのダウンロードがメジャーなようだ。そんな中国人とパソコンとアダルトビデオの関係を次回は紹介しよう。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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