現在販売されている、もっとも高い動作クロックのCPUはCore i7-975 Extreme Editionの3.33GHzだ。しかし、これは「だった」と過去形になった。それは2009年8月13日に発表された「Phenom II X4 965 Black Edition」(以下、Phenm II X4 965 BE)が3.4GHzで登場し、動作クロックでCore i7を抜いたためだ。
過去に登場したx86アーキテクチャのCPUでもっともクロックが高かったのは、「Pentium 4 570/670/672」などの3.80GHzだが、以降は、物理コア数競争へ移行し、その結果TDPの問題から動作クロックは2GHz台が中心となったことでクロック戦争は一時的に収束したかのように見えた。しかし、ここ最近再び3GHzオーバーがx86アーキテクチャCPUのトレンドになりつつある。その背景にはTDP問題がクリアできる45nmプロセスルールの採用や、ステッピングの改善などがある。
そんな中、AMDは久しぶりに動作クロックでIntel CPUを追い抜き、トップに立った。なおクアッドコアとしてみた場合、「Phenom II X4 965 BE」は歴代最速動作クロックのCPUとなる。下の表はその「Phenom II X4 965 BE」と、これまでAMD最速だった「Phenom II X4 955 Black Edition」(以下、Phenm II X4 955 BE)、そして「Phenom II X4 965 BE」と同じ価格帯のIntel製CPU「Core i7-920」のスペックを比較したものだ。
CPUスペック | |||
---|---|---|---|
製品名 | Phenom II X4 965 Black Edition |
Phenom II X4 955 Black Edition |
Core i7-920 |
CPUパッケージ | Socket AM3 | Socket AM3 | LGA 1366 |
CPUソケット | Socket AM3/AM2 | Socket AM3/AM2 | Socket B |
製造プロセス | 45nm SOI | 45nm SOI | 45nm High-k |
ステッピング | C2 | C2 | D0/C0 |
CPUコア数 | 4 | 4 | 4 |
論理CPU数 | 4 | 4 | 8 |
動作クロック | 3.4GHz | 3.2GHz | 2.66GHz |
ベースクロック | 200MHz | 200MHz | 133MHz |
2次キャッシュ | 512KB×4 | 512KB×4 | 256KB×4 |
3次キャッシュ | 6MB | 6MB | 8MB |
TDP | 140W | 125W | 130W |
対応メモリ | DDR2-1066 DDR3-1333 |
DDR2-1066 DDR3-1333 |
DDR3-1066 |
店頭予想価格 | 2万5800円前後 | 1万4800円前後 | 2万8000円前後 |
さて、Phenm II X4 965 BEがどんなCPUかと言えば、「Phenom II X4 955 Black Edition」(以下、Phenm II X4 955 BE)のクロックを0.2GHz向上させただけのCPUだ(関連記事)。CPUパッケージやHyper-Transportのクロックが同じなのはもちろんのこと、ステッピングも同じ「C2」となっている。スペック表で異なる箇所は、動作クロックが3.4GHzであること、そしてPhenm II X4 955 BEでは、125WだったTDPが140Wになっている点くらいである。また名称に「Black Edition」が付いているため、CPU倍率はロックフリーとなっている。このためCPU倍率を変更してオーバークロックすることが可能なのも、従来どおりである。
一方、8月4日に発表された「AMD 785G」は、グラフィックス内蔵チップセットして初のDirectX 10.1に対応する「ATI Radeon HD 4200」を搭載している。スペックを見る限りAMD 780GのDirectX 10.1対応モデルという位置づけと思われ、パフォーマンスそのものは「AMD 790G(ATI Radeon HD 3300)」と大きく変わらないことが予想される。またATI Radeon HD 3450と組み合わせることで「Hybird Graphics」に対応する点も従来どおりだ。なおAMD 785Gと組み合わせられるサウスブリッジはSB710となっている。
チップセットスペック | |||||
---|---|---|---|---|---|
チップセット名 | AMD 785G | AMD 790GX | AMD 780G | ||
内蔵グラフィックス名 | ATI Radeon HD 4200 | ATI Radeon HD 3300 | ATI Radeon HD 3200 | ||
シェーダプロセッサ数 | 40 | 40 | 40 | ||
DirectX対応 | 10.1 | 10.0 | 10.0 | ||
グラフィックスコア動作クロック | 500MHz | 700MHz | 500MHz | ||
SidePort Memory対応 | ○ | ○ | ○ | ||
ROP数 | 4 | 4 | 4 | ||
ノースブリッジの製造プロセス | 55nm | 55nm | 55nm | ||
Hybird Graphicsサポート | ○ | ○ | ○ | ||
ATI CrossFireXサポート | ○ | ○ | - |
(次ページへ続く)
この連載の記事
-
第439回
自作PC
暴れ馬すぎる「Core i9-14900KS」、今すぐ使いたい人向けの設定を検証! -
第438回
デジタル
中国向け「Radeon RX 7900 GRE」が突如一般販売開始。その性能はWQHDゲーミングに新たな境地を拓く? -
第437回
自作PC
GeForce RTX 4080 SUPERは高負荷でこそ輝く?最新GeForce&Radeon15モデルとまとめて比較 -
第436回
デジタル
環境によってはGTX 1650に匹敵!?Ryzen 7 8700G&Ryzen 5 8600Gの実力は脅威 -
第435回
デジタル
VRAM 16GB実装でパワーアップできたか?Radeon RX 7600 XT 16GBの実力検証 -
第434回
自作PC
GeForce RTX 4070 Ti SUPERの実力を検証!RTX 4070 Tiと比べてどう変わる? -
第433回
自作PC
GeForce RTX 4070 SUPERの実力は?RTX 4070やRX 7800 XT等とゲームで比較 -
第432回
自作PC
第14世代にもKなしが登場!Core i9-14900からIntel 300まで5製品を一気に斬る -
第431回
デジタル
Zen 4の128スレッドはどこまで強い?Ryzen Threadripper 7000シリーズ検証詳報 -
第430回
デジタル
Zen 4世代で性能が爆上がり!Ryzen Threadripper 7000シリーズ検証速報 -
第429回
自作PC
Core i7-14700Kのゲーム性能は前世代i9相当に!Raptor Lake-S Refreshをゲーム10本で検証 - この連載の一覧へ