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「年商1億のチャリンコ屋」顧客目線の値上げ戦略 (1/2)

2009年08月27日 08時00分更新

文●三浦たまみ

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なぜ、あのネットショップは今日も繁盛しているのか? なぜ、自分のショップでは商品が売れないのか?
他にはない強い商品開発力、他店を引き離す圧倒的な集客手法、一度捕まえたお客を逃がさない囲い込み術……と、成功したネットショップには現場で蓄積されたノウハウがある。本連載では、全国の優れたネットショップの事例からそのノウハウを公開。あなたのショップの“勝ちパターン”を見つけるヒントにしよう。⇒連載インデックス

■今回の成功ネットショップ:
自転車販売『サイクルサービスおおやま』


1996年11月、千葉県松戸市に自転車販売の実店舗『サイクルサービスおおやま』オープン。同年、同名のホームページを開設。1997年8月よりショッピングカート機能を付け、ネットショップも本格的にオープン。現在は、ロードレーサー、マウンテンバイクをはじめ主にスポーツ自転車を中心に販売。年商7400万円(2007年時点)。


需要の見込める”お手頃価格”をあえて外す

 1997年の開業当初から、初心者に購入してもらうことを目指していた自転車販売の『サイクルサービスおおやま』の大山義治さん。マウンテンバイク、ロードレーサーをはじめとするスポーツ自転車のラインアップを増やしていきましたが、当初、力を入れて揃えた価格帯は4~6万円程度で購入できる商品でした。

「もっとも需要が見込める価格帯だったからです。それまで1~2万円のママチャリに乗っていた人にとって、4~6万円は決して安くはないけど予算内に収まる金額。“スポーツ自転車事始め”として最適だと思う人が多いんですね」

 しかし販売するうちに、大山さんは、あえてワンランク上の7~10万円クラスの自転車を勧めるように方向転換を図ります。その方がお客さんのためになることに気づいたのです。

大山さん

店主 大山義治さん

「4~6万円の予算内に収まる自転車を買った人は、野ざらしで自転車を保管するなど扱いが雑になりやすく、結果、『故障だ』『修理だ』とトラブルも増えてしまうことが多いんです。一方、7~10万円の自転車は、予算はオーバーするけどがんばれば購入できる価格帯。4~6万円の自転車より性能に優れているためトラブルそのものがぐっと減る傾向にありますし、何より購入者自身が、『高かったんだから』と泥やほこりをマメにふき取ったり、使うたびに家のなかに収納するなど、ていねいに扱うために長持ちするんです」

 「初心者だから安いもの」ではなく、「初心者だからこそワンランク上のもの」を購入してもらい、メンテナンス意識を高めることで商品に対する愛着を深めてほしいと思ったのです。また、4万円の安価な自転車も50万円の高額な自転車も、同じ個所が壊れたときにかかる修理費用は大幅に変わるわけではありません。1回の修理代金に2~3万円ほどかかってしまうような場合、安価な自転車であれば「買い替えた方が早い」という結論にしか至らず、大切に使おうという気持ちは削がれてしまいます。大山さんは、7万円以上のクラスをプッシュすることで、お客さんの意識改革も促していきました。同時に、スポーツ自転車に“本気で”乗ってみたいと考える潜在顧客にアプローチすることにつながりました。

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