Settenを実現する7つの技術
クラウドというと、技術的にブラックボックスであることを揶揄する意味もあるが、その点Setenは風呂敷のように隠されていない。内部的な技術要素が明らかになっているのもSettenの大きな特徴だ。
Settenは、大きく7つの技術から構成されている。
(1)仮想データセンタ
既存のサーバ・ストレージの仮想化に加え、データやロケーションも分散。安全なデータセンターを実現
(2)WebOS
ネットワークや端末に依存しないコンピューティング環境を実現するWebブラウザ用のデスクトップを提供。アプリケーションをWebOSを介して提供することで、シンクライアント的な利用も可能
(3)多要素認証
端末やユーザーID、回線、アプリケーションなど複数の認証技術を組み合わせることで強固な認証を実現。また、サービスによって、認証の組み合わせを換え、カスタマイズできる
(4)仮想ネットワークジェネレータ
ルーティング制御やセキュリティ、NAT越え、HTTPトンネリングなどの技術を組み合わせることで、ネットワークに依存せず、オンデマンドでVPNを構築する。キャリアに依存せず、携帯電話でも利用可能
(5)コミュニケーションサービスバス
Setten上の各機能を呼び出すためのAPIを提供する。たとえば、WebのサービスからVoIPや公衆電話、TV会議などのサービスを呼び出すことが可能。また、必要な機能を順番に呼び出し、処理させるフローを設定。電話の着信ができなかったら、留守番電話につなぐといったシナリオを実行することが可能になる。あらゆるものをつなぐSettenのコア機能
(6)パーソナルエージェント
ユーザーのほしい情報を取得する代理プログラム。キーワードや行動履歴、趣向などのプロフィールのほか、センサー技術を元にした個人の身の回りの情報なども取り込み、満足度の高い情報を提供する
(7)エンドツーエンドオペレーション
ネットワーク側とユーザーの端末を双方向で監視し、トラブル時にネットワークを切り替えたり、サポートを行なうなどのオペレーションが実現
これらはNTTグループの基盤技術を集大成となっている。たとえば(6)のパーソナルエージェントは、NTT Comで開発したものを、gooで用いているという類のもの。また、(3)の多要素認証ではNGNの回線認証がベースにある。現状の進捗で見ると、「第一弾の実証実験はおもに(1)~(3)の技術を用いており、(5)もすでにトライアルで一部使っています。(6)はインターネットなどで使われており、(7)はプロトタイプができています」(川淵氏)という感じだという。もちろん、NTT Comが力を入れているIPv6での対応も前提しているが、現状はIPv4でも利用できるという。
Settenはあくまで技術であり、将来的にはNTT Comが提供しているSaaSブランドである「BizCITY」と基盤となるものだ。「今まで複数のサービスがBizCITYというブランドで統一されていたのですが、必ずしもサービス自体が統合されているわけではありませんでした。これを統合していくのがSettenという“技術”です。その意味で“Setten”というサービスは出ません」(小室氏)という方向性だ。たとえば、シンクライアントのサービスとストレージサービスを融合し、シンクライアントでのユーザーデータをストレージサービスに保存することで、コスト削減を実現するといったことが可能になる。
今年度中にトライアルは終了し、実現したソリューションごとにBizCITYサービスの1つとして提供することになるようだ。AmazonやGoogleなどの「スケールメリット」、SIerなどの「インテグレーション能力」とは異なる、通信事業者のクラウドならではのメリットがどれだけ描けるかが、今後の鍵となるだろう。
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