日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)はクラウドコンピューティングに関する取り組みを説明する発表会を開催。プライベートクラウド環境の構築をワンストップで実現する「IBM CloudBurst」を発表した。
パブリックとプライベートのクラウドを
「Smart」でくくる

日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 未来価値創造事業担当 岩野和生氏
発表会の冒頭挨拶に立った日本アイ・ビー・エムの岩野和生氏は、おもにインターネット上で提供されているパブリッククラウドの限界と企業内のプライベートクラウドについて「昨今、さまざまなパブリッククラウドが展開されているが、データやサービスのガバナンス(統治)が効かないという声はよく聞かれる。こうした声に対して、企業内で構築されるエンタープライズ・クラウド、さらには業務の共通化が図れる業界クラウドが主流になってくる」と語った。これに対して仮想化、標準化、自動化という3つの要素の組み合わせによって、コスト削減と利便性の向上を図るというのがIBMの方向性だ。
これまでIBMはパブリッククラウドとプライベートクラウドの両面で製品を発表してきた。また、クラウドコンピューティングセンター開設や各種コンサルティングサービスも充実してきた。6月に米国で発表されたが、今後は日本でも同社のクラウド関係の製品・サービスは「Smart Business」のブランドに統合され、サービスは「Smart Business Services」、製品群は「Smart Business Systems」と称される。
5日で構築できるクラウドパッケージ

日本アイ・ビー・エム株式会社 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 三浦 浩氏
そして、今回発表されたのがSmart Business Systemsのエンタープライズ・クラウド製品「IBM CloudBurst V1.1」。これはクラウド構築に時間とコストをかけたくない、設計構築のノウハウがないといったユーザーのフィードバックを受けて作られたオールインワンパッケージだ。具体的にはブレードサーバ、ストレージ、スイッチ、ラックなどのハードウェアから、仮想化ハイパーバイザ、自動化ツール、サービスカタログといったソフトウェア、セットアップや設定、トレーニングなどのサービスまでを含む。セットアップが完了し、プライベートクラウドが構築されたら、あとはユーザーが専用ポータルからサービス利用申請を行なえば、必要なITリソースが割り当てられる。
日本アイ・ビー・エム株式会社の三浦 浩氏は「必要なハードウェアやソフトウェアはすべて用意されます。導入までのトレーニングまで含まれますので、導入後はユーザー自らで運用できます。店員の手を煩わさなくても、ガソリンを自分で入れられるのと同じです。実際に利用するまでも5日間で済みます」とその手軽さをアピールする。
実際のIBM CloudBurstを用いた社内クラウドの検証では、平均5日間かかっていた導入・構成の時間がわずか20分に短縮。また、563台あったサーバを130台に、15名いた管理者の人数がわずか2人まで削減。クラウド=コスト削減と利便性向上が裏付けられた形となっている。
価格が2448万7500円ということで、当初は研究所や大学、開発・テスト環境を持った企業、大規模データセンターを持つユーザーなど比較的大規模な組織がターゲットになりそう。ただ、特別価格キャンペーンや月額料金での提供も予定しているという。

この連載の記事
-
第9回
データセンター
NTT Com、settenベースのクラウドサービスをいよいよ商用化 -
第8回
データセンター
NTT Comのクラウド“Setten”を実現する7つの技術 -
第7回
データセンター
「IIJ GIO」発表!プライベート型は11月スタート -
第6回
データセンター
NTTコム、WebOS採用のクラウド基盤「setten」実証実験へ -
第5回
データセンター
基盤技術で勝負!IIJお手製クラウドは近々離陸 -
第4回
ソフトウェア・仮想化
「21世紀のメインフレーム」を実現するvSphere 4 -
第3回
TECH
基調講演で見えたクラウド時代のセキュリティ対策 -
第2回
サーバー・ストレージ
米IBM、香港にクラウド研究所 -
第1回
ネットワーク
クラウドの先は雨か、快晴か? -
ネットワーク
クラウドをつかめ - この連載の一覧へ