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クラウドをつかめ 第1回

セールスフォース・ドットコムが考えるクラウドの姿とその課題

クラウドの先は雨か、快晴か?

2008年12月11日 04時00分更新

文● 大谷イビサ/ネットワークマガジン編集部

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12月10・11日の2日間、東京国際フォーラムにおいて、IDGジャパン主催の「SaaS World/Tokyo 2008」(以下、SaaS World)が開催された。基調講演には、SaaSの旗手セールスフォース・ドットコムのポリー・サムナー氏が登壇し、最新の同社の取り組みとクラウドコンピューティングの未来について解説した。

いよいよ10億ドルを超える売上を実現

 総務省の西浦氏に続いて講演したのは、名実と共にSaaSの旗手として君臨するセールスフォース・ドットコムのポリー・サムナー氏だ。同氏は「Your Success. Our Cloud.」というテーマで、クラウドコンピューティングがエンドユーザー、あるいはISV(独立系ソフトウェア会社)にもたらすメリットについて講演した。

米セールスフォース・ドットコム プラットフォーム アライアンス&#38

米セールスフォース・ドットコム プラットフォーム アライアンス&サービス プレジデントのポリー・サムナー氏

 顧客管理やサポート業務に利用するCRM(Customer Relationship Management)ツールを「Salasforce.com」としてインターネット上で提供する同社だが、1999年の設立以降、複数ユーザーでシステムを共用するマルチテナントモデル、利用量に応じた課金、そして縮小や拡大が可能なシステムの柔軟性などを武器に、快進撃を続けてきた。

 既存のWebアプリケーションをインターネットに展開しただけの旧来のASP(Application Service Provider)では実現できなかった、基幹システムとの連携やカスタマイズなどを可能にし、マーケティング上のバズワードとされていた「SaaS」に実体を与えた同社の功績は大きい。季節の変わり目にバージョンアップを繰り返しつつ、使い勝手やシステム連携の柔軟性を向上させ、サービスを磨き上げてきた。この結果、「SaaSベンダーの中で、初めて年間の売上高が10億ドルを突破した。また、ユーザーも2008年10月時点で5万1800社を超えており、日本でも郵便事業様など多くの顧客を得ている」(ポリー氏)という実績を実現できたという。

 講演では、セールスフォースを導入した楽天や三菱石油、キヤノンマーケティング、みずほ情報総研、郵便事業などの各情報システム担当者からのコメントもビデオで紹介された。どの企業も、システムをスピーディに展開できる点、高いセキュリティを実現している点、カスタマイズが容易な点などを高く評価していた。同社が調べた顧客満足度調査も95%が満足と答えており、さらに72%はほかの人にSalasforce.comを勧めたという。

次に目指すのは 異なるプラットフォームとの連携

 セールスフォース・ドットコムは自社のCRMを提供するだけではなく、アプリケーション配信と開発のプラットフォーム「Force.com」をISVに提供し、PaaS(Platform as a Service)としてクラウドコンピューティングを推進している。これにより、エンドユーザーは同社のCRMツールだけではなく、ISVが開発した他のアプリケーションも同じプラットフォームで利用できる。

サービスだけではなく、プラットフォームをオンラインで提供する

サービスだけではなく、プラットフォームをオンラインで提供する

 ISVの代表として、講演にはForce.com上に自社のERPパッケージ「SuperStream」を展開する準備を進めているSSJの竹内 伸社長が登壇した。竹内氏は「プラットフォームからの脱却やデータの集中などISVには大きなメリットがある」とForce.com上に既存のソフトウェアを載せるメリットを解説した。とはいえ、「今まで「Win-Win」の関係を気づいてきた既存パートナーとの関係が変わってしまうのを危惧している」と指摘。販売経路が一元化してしまうことに対する懸念を表明し、セールスフォース・ドットコムでの検討を促した。

 そして、現在セールスフォース・ドットコムでは、異なるプラットフォームの連携を進めている。ポリー氏は「現在Force.com上でグーグルの各種サービスが利用可能になっており、AdwrardsやGoogleAppsの利用率も高い。先頃、AmazonやFacebookのクラウドとの連携も発表した」と昨今の提携について説明。2つの異なるサービスが違和感なく利用できるところが、まさにクラウドといった印象だ。

 GoogleサービスとForce.comとの連携

GoogleサービスとForce.comとの連携

 このようにクラウドコンピューティングがもてはやされる現状を、講演のプレゼンテーションでは「ソフトウェア業界の天気予報は当分『曇り(クラウド)』である」と表現していた。コスト削減や合理化が進められる金融危機化の昨今、SaaSやクラウドコンピューティングはますますもてはやされている。とはいえ、前述したパートナーの問題やSaaSの普及率や知名度の低さ、またアウトソーシングへの潜在的な不安などの課題もある。こうした課題を解決してからこそ、クラウドコンピューティングの未来は『快晴』になるだろう。

我々はソフトウェアか、クラウドコンピューティングかの二者択一を求められている

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