6月2日、NTTコミュニケーションズは、クラウドコンピューティングを実現するためのサービス基盤「setten(コード名)」を用いた実証実験を開始した。NTTグループもいよいよクラウドコンピューティングの本格的なサービス化に向けて動き始めた。
現状のクラウドの課題を解決する「setten」
NTTコミュニケーションズが開発中のサービス基盤であるsettenは、文字通り日本語の「接点」にちなんだもので、「あらゆるモノをつなぐ」という意味を含んでいるという。具体的には、NTTコミュニケーションズの先端IPアーキテクチャセンタやNTT研究所が開発した技術をベースに構築したサービスプラットフォームを指し、SaaS連携を可能にするAPI群、多要素認証、WebOS、ストレージ、検索用エージェント、統合管理などの機能が用意される。
ユーザー側から利用するためのネットワークは、NGNなどを含む固定網、移動体通信網、国際網などを自由に選択でき、場所やデバイスに依存しない利用が可能になる。また、デジタルサイネージや自動車、センサー系端末、交通情報系端末など、リアル世界の各種端末ともつながり、サービス基盤と連携するという。「さまざまなサービスを連携させる接着剤のような存在」(NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 担当課長 川淵聡氏)というのが、まさに名が体を表すsettenの役割といえる。
NTTコミュニケーションズは、こうしたsettenの整備により、既存システムとの連携が難しい、ネットワークまでを含めたシステム統合が行なわれていない、サービスメニューが貧弱など、既存のクラウドで弱点になっている部分を解消。インフラやアプリケーション共用によるコスト削減やクラウドならではのオンデマンドなサービス導入、そして品質やセキュリティを確保したネットワークアプリケーションの利用などを実現するという。
まずはWebOSでのワーク環境を提供
今回の実証実験では、リモートオフィス環境の提供をsettenで実現する。具体的には、Webブラウザ上で動作するWebOSを経由して、社内システムのサーバを利用するというもの。setten上にはWebOSだけではなく、アドベントネットのオフィススイート「Zoho」や「ビジネスgoo」が用意されており、ユーザーはPCや携帯電話のWebブラウザからこれらにアクセスし、メールやファイルサーバなどを利用することになる。
今回の実証実験アプリケーションのみを提供するSaaSと異なり、OSまでを含むワーク環境そのものをネットワーク経由で配信する、サーバベースコンピューティングをサービスとして実装した例といえる。参加するユーザー企業は流通業、SIer、教育機関、グローバル企業など15社。実験ではワークスタイル変革の実現性、ビジネス面での可能性、システムの可用性などを検証する。
settenは2009年8月までの実証実験ののち、2009年度中には具体的なサービスとして提供される。具体的には同社のSaaS系事業のブランド「BizCITY」の基盤に取り込まれていく予定となっている。

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