NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が手がけるクラウドの基盤となるのが、“Setten”である。ネット社会、リアル社会、デバイスなど、あらゆるものをつなぐためのサービス環境を提供するsettenの概要と技術について、担当者に聞いた
ユビキタスを実現するための
クラウドコンピューティング
一昔前、「いつでも、どこでも、なんでも、誰とでもつながる」ネットワーク世界を表す用語として、「ユビキタス」が流行した。このユビキタスを実現するための要素として、FTTHなどのブロードバンド環境、iPhoneを筆頭とするスマートフォンなどのデバイスなどはある程度そろいつつあるものの、いまだユビキタスが実現したとはいいがたい。Settenの開発に携わるNTTコミュニケーションズの先端アーキテクチャセンタの見立てでは、ここで欠けているのがなんでも雲の中から取り出せるという意味での「クラウドコンピューティング」環境だ。
世にいうクラウドコンピューティングは、AmazonやGoogleなどのように数千、数万台のサーバや大容量ストレージから構成される大規模なインフラの余剰リソースを他社に貸し出すというモデルが一般的だ。これに対して通信事業者であるNTT Comは、データセンターやSaaSアプリケーションにとどまらず、ネットワークまで含めた幅広い概念でクラウドを捉える。「現在、クラウドコンピューティングを展開するにあたっては、既存システムとの連携はどうする? 信頼性やセキュリティは確保できるのか? 複雑なサービスメニューからどれを選ぶ? 他社と混在で海外のリソースを利用することに対する不安は? など、課題が山積しています」とより包括的なアプローチが必要な背景を、NTT Comの川淵聡氏は語る。
こうした課題を解決するために開発されたSettenは、インターネット上にあるさまざまなサービス、今までネットワークに接続されていなかったリアル世界のデバイスや情報、そして利用するユーザーを安全につなぐまさに「接着剤」である。通信事業者ならではのアプローチとして、既存のシステムとの連携も想定されており、信頼性やセキュリティも確保する。こうした基盤を事業者に提供することで、新たなビジネスを送出するのが、Settenの役割だという。
Settenにより、ロケーションやネットワーク、デバイスなどに依存せず、必要な情報をクラウドから取り出し、サービスを利用できる。しかも、クラウド上にあるサービスだけではなく、既存の社内システムやパートナー、顧客などともオンデマンドでつながる。自動車やメディア、温度センサーなどリアル社会のデバイスとの接続性が向上すれば、より多くのサービスや情報を引き出せることになる。
その具体例として、各業界の15社によって第一弾の実証実験が2009年6月から開始された。これはインターネットからSetten経由で社内システムにつなぎ、Webブラウザで動作するデスクトップ上からアプリケーションを利用するというもの。現状は「特にケータイからWebOS経由で企業の情報を閲覧できるというところが評価されています」(川淵氏)とのこと。いわゆる「ユビキタスオフィス」の実装にSettenを利用した例だが、今後こうしたいくつかのソリューションを実験として展開していくことになる。
(次ページ、Settenを実現する7つの技術とは?)

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